女性同士の恋愛を「手紙」で追想する映画『ユンヒへ』の魅力
#韓国
1月7日より、韓国映画『ユンヒへ』が公開されている。本作は北海道・小樽を舞台に、20年前の女性同士の恋を「追想」するかのようなラブストーリーだ。
本作は韓国のLGBTQ+コミュニティや女性たちから熱狂的な支持を受け、2019年の釜山国際映画祭でクィアカメリア賞(独立賞)を受賞。さらに2020年に韓国のアカデミー賞ともいえる青龍映画賞で最優秀監督賞と脚本賞をW受賞した。その絶賛ぶりが納得できる魅力を、インスパイアを受けた多数の要素と共に紹介していこう。
岩井俊二監督の『Love Letter』にインスパイアされた理由
物語は、韓国の地方都市で暮らすシングルマザーのユンヒが、ずっと連絡を絶っていた初恋の女性から手紙を受け取ったことから始まる。その手紙を盗み読み、母の知らない姿を垣間見た高校生の娘セボムは、手紙の差出人である日本人女性のジュンに会わせようと決心し、半ば強引に北海道・小樽へとユンヒと共に旅立つことになる。
厳しくも美しい小樽の冬景色と、手紙が過去を紡ぐ「心の旅」が描かれる様は、岩井俊二監督の『Love Letter』(1995)を強く連想させる。実際にイム・デヒョン監督は、その『LoveLetter』にインスパイアされたことを明言しており、小樽を舞台にしたこと自体も『Love Letter』好きの友人に誘われて、その地を訪れたのがきっかけだという。
イム監督は、雪がたくさん降るその小樽という場所を新鮮に感じたことに加えて、『Love Letter』に限らない、北海道を舞台にした日本の映画やドラマの中に入り込んだような印象を受けたという。その空間は、自身の心の中ですでに作り上げたキャラクターを、現実的な人物にするうえで大いに役に立ったのだそうだ。
それでいて、イム監督は「『Love Letter』からどれだけ離れるか(独自の魅力を打ち出すか)」も強く意識したという。確かに、『Love Letter』とは違った過去の映像をいっさい出さずに想像力を喚起させる作り、その子どもや叔母の視点も多く、女性2人の「心の距離感」がよりミステリアスに描かれるなど、オリジナリティーもしっかりある内容になっている。『Love Letter』のトリビュート的な内容でありつつも、新しいラブストーリーを期待する方に特におすすめできる内容と言えるだろう。
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