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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『志村けんとドリフの大爆笑物語』の批評性

現代のお笑い番組への批評を含んだ『志村けんとドリフの大爆笑物語』

ドリフコントを完全再現する凄み…

 そして後半部分のコントシーン。ドリフの名作コントと言われるコントを再現している。ドリフ大爆笑のオープニング、もしもシリーズの代表作とされる銭湯コント。志村さんが新しいものをやりたいと生み出した「ヒゲダンス」。いかりやさんの負担を減らすために加藤さんと作り上げたCMコント。さらにいかりやさんからコントを任された志村さんがほぼアドリブ挑んだ加藤さんとの階段落ちコント。志村さんの代表作「変なおじさん」。そして番組の最後はドリフ大爆笑のエンディング。

 冒頭のズンドコ節や東村山音頭も含めて、このドラマで見られるコントや芸の再現度は相当高い。特に高いもしもシリーズの遠藤さんは最後いかりやさんに見えたし、ヒゲダンスのステップはその当時の2人の動きそのものだった。

 そして特に凄いと思ったのは階段落ちコントの勝地さんだ。まるで加藤茶さん本人のようだった。僕の記憶の中のコントと比べてみたときに再現度はほぼ100%と言っても過言ではない。どうやって撮影したのかわからないが、加藤さんと志村さんがほぼアドリブでやったコントを見事に再現していた。たぶんワンシーンずつカメラを止めながら撮影した可能性が高いが、リアルタイムで見たいと思うほど見事だった。

 このドラマには下記のようなシーンがある。

全員集合の稽古場に番組スタッフが段ボールを持ってくる。その中身は子供に見せたくない番組ワースト1位ということでクレームの手紙。

 それに対していかりやさんが

いかりや「文句言ってんのどれくらいいんのよ?」
スタッフ「毎週200件かそこらですかね」
いかりや「先週の視聴率何%?」
スタッフ「41です」
いかりや「人数にするとどれくらいの人が見てんの?」
スタッフ「4500万人くらいですねぇ」
いかりや「俺たちの番組楽しみにしてくれてる4500万人とアンチの200人、どっちの声に耳を傾ける?志村」
志村「そんなの決まってるじゃないですか。笑いたがっている4500万人を笑わせましょうよ。大体文句言ってるってことはそいつらも見てるんですよね」
加藤「ワースト1位? 上等じゃないの。なんだって1位ってのは凄いことだよ。な?」
いかりや「ま、そういうわけだ。下品上等。俺たちはこれからも下品で体張ったコント1本で行く」

というやり取りが行われる。

 今の時代に物申すかのようなシーン。実際にドリフターズはそのスタイルを崩すことはなく、そして志村さん自身も計算されたコントだけではなく、時には下ネタと呼ばれるようなコントをやり続けた。

 土曜20時というゴールデンタイムから深夜番組になってもその信念を通し続けたことになる。

 悲しいかな、今はドリフターズや志村さんが貫き通した笑いの時代とはいささかズレてきている。

 昔からゴールデンタイムに、女性のおっぱいが出ることに抵抗感があった人はいるはずだ。しかし視聴者のほとんどが下ネタをネタとしてとらえ、ギャグやコントのひとつの手法であると思ってくれていた。しかし現代人にとって下ネタは女性への差別であり性的搾取であると捉えがちになり、今まで笑えていた人たちも手のひらを反すように多数派の意見へ流されてしまう。

 恐れずにいうなら下ネタはすべてが下品で、すべてが差別的なものではない。頭ごなしに下ネタとひとくくりにして、排除しようとする活動だけはしないで頂きたい。未来のお笑い界の為にも。

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