『ダンダダン』『SANDA』…まだまだ追いつける!既刊3巻以下のおすすめコミック
“おうち時間”がニューノーマルなものとして定着し、コミック市場の推定販売金額が25年ぶりに過去最高(紙&電子)を更新した2020年。その流れを受けた2021年は、『東京卍リベンジャーズ』や『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』といった人気少年漫画のさらなる躍進が目立った。『名探偵コナン』『ONE PIECE』は100巻の大台に突入し、『チェンソーマン』の作者・藤本タツキ氏の新作読切『ルックバック』が議論を呼び起こすなど、話題に事欠かなかった印象だ。
今回は、「2021年おすすめコミック5選」と題し、映画・ドラマ・アニメ・小説・漫画等を専門とするSYO(物書き)が個人的に刺さった新作漫画をセレクト。なお、2021年12月の時点で既刊3巻以下のものを選出した。年末年始の休みなどにまだ追いつけるボリュームのため、ぜひチャレンジいただきたい。
『ダンダダン』著:龍幸伸(集英社「少年ジャンプ+」掲載)
2021年にWeb漫画サービス「少年ジャンプ+」で連載を開始し、恐ろしいほどの画力と「オカルト×恋愛×バトル」といった多ジャンルがミックスされた異質な作風で瞬く間に人気作品入りした『ダンダダン』。現在、3巻まで発売中だ。
本作は、オカルト好きの男子高校生・オカルンと祖母が霊媒師の女子高生・モモが特殊能力を得て共闘する物語。ふたりが宇宙人や幽霊、UMAに妖怪等々、様々な敵と対峙し、特殊能力(念力や圧倒的な走力)と知力を駆使して退けていく。
アクロバティックなアクションや爽快なテンポ感、オカルンとモモの丁々発止のやり取り等、ページをめくるごとに新たな面白さと喜びが押し寄せる作品であり、先に述べたようにジャンルミックス感が強いため「●●っぽい」といったカテゴライズや「次に●●が起こりそう」といった予測が立てづらく、そこに圧巻の画力が加わってオリジナリティにつながっている(あえて言うなら、『ジョジョの奇妙な冒険』的な駆け引きと戦闘シーンのセリフ回しを効果的に用いており、カタルシスとダイナミズムを生み出している)。
様々な面でクオリティが高く、話題になるのも頷ける『ダンダダン』なのだが、個人的にはWeb漫画の特性を生かした非常にチャレンジングな内容を推したい。
それは、「怖さ」だ。本作は、幽霊や宇宙人といったオカルティック&クリーチャーホラー的な恐ろしさはもちろん、人間の怖さをしっかりと描いている。信仰にハマる人間の異常性、男女関係なく暴力を受ける恐ろしさ(殴る蹴るの暴行や、性的暴行等)がギリギリのラインで描写され、エピソードによっては読むこちらの体力と気力をかなり削ってくる。ただそれが、いわゆる青年誌的なエグめな世界観でなく、少年漫画としての枠組みを保ちながら実現されているのが興味深い。妖怪や幽霊の過去を描く“泣ける”ドラマも挿入され、ただ面白いだけではない“記憶に残る”作品といえるだろう。
作者の龍幸伸氏は、過去に野球漫画『FIRE BALL!』等を発表し、近年では『チェンソーマン』の藤本タツキ氏や『地獄楽』の賀来ゆうじ氏のアシスタントとして活躍していた人物。実力者がWeb漫画のフィールドでどんな革命を起こしてくれるのか、今後の展開にも期待したい(なお、現在展開中の新エピソードもかなり攻めた内容だ)。
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