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スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会 #22

「鬱は特権階級の病気だった」極上ジョークで斬る “白と黒で見る”アメリカの今

「鬱は特権階級の病気」極上のジョークと鋭い洞察 白と黒で見るアメリカの今の画像1
『Shame The Devil(邦題は『ぶっちゃけ話』)』YouTubeより

 人気コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ(以下『SNL』)』の看板コーナー『ウィークエンド・アップデート』でキャスターに扮し、ニュースを風刺し続けているスタンダップコメディアン、マイケル・チェの自身5年ぶりとなるネットフリックスでのライブ・スペシャル『Shame The Devil(邦題は『ぶっちゃけ話』)』が先日配信された。

 1983年、ニューヨークの黒人家庭に7人兄弟の末っ子として生まれたチェは、10代の頃から地元のクラブに立ち始め、2013年『SNL』のライターとして番組に参加すると、翌年には先述の“ニュースキャスター”に抜擢された。番組内でともに“キャスター”を務める白人コメディアンのコリン・ジョストとの好対照な掛け合いも、大きな魅力のひとつとなっている。

 しばしば「Low Key(控えめな、落ち着いた)」と評される、その抑えた語り口による黒人視点からの鋭い社会洞察と、皮肉の効いたユーモアを武器に、長年にわたり番組の「顔」としてアメリカ全土に笑いを届けてきた。

 本作の収録が行われたのはアメリカ全土でワクチン接種が進み、満席でのショーが可能になっていた2021年夏。カリフォルニア州オークランドにあるフォックス・シアターは、観覧チケットが即日ソールドアウトとなった。

 この日会場では、今日のアメリカでの多くのエンタメがそうであるように、観客に入り口でのワクチン接種証明の提出と、客席でのマスク着用を義務付けた。

 これを受けて冒頭、舞台に上がったチェは「俺の公演はワクチン接種してくることがルールだ。俺のショーに来たけりゃ、ワクチンを打つか、証明書を手に入れろ」と言い放つ。アメリカでは、ワクチン証明カードの偽造が今大きな問題になっている。ドラッグストアなどで付与される証明書は、偽造が容易に可能であるため、多くの人々が偽の証明書でコンサートなどに入場しているという。

 その上で「俺はワクチンの効果について、実はまだ少し疑ってるんだ。なぜかっていうと、無料だからさ。アメリカでは未だかつて薬が無料だったことがあったか? 人は“科学を信用しろ”と言うが、俺は科学のことはわからない。だから“歴史”を信用する。歴史は、“正しいものは有料だ”と証明してる」

 ワクチンの接種開始が早かったアメリカでも、その後ペースが伸び悩み21年12月現在でも国民のワクチン接種率は61.7%に留まり、南部や中西部など一部の地域では40%台と抵抗を示す人々が多い。ニューヨーク州やカリフォルニア州などでは70%以上の接種率なのに対し、テキサス州などではワクチン義務化を違法とする州法まで成立するなど大きな隔たりがあるのが現状だ。

 そうした中で『SNL』内でも、ワクチン接種に賛成の立場から、頑に接種を拒む人々を散々揶揄してきたチェが語る「ワクチンを信用していない」という皮肉の効いたジョークは実に彼らしい。そして、国民皆保険制度がなく、高額な医療費が問題となっているアメリカの状況と合わせてオチにしてみせた。

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