子宮頸がん予防ワクチンの接種率減少で、子宮頸部細胞診異常率が上昇 阪大研究G
#ワクチン
大阪大学の研究グループは、子宮頸がんを予防するHPV(Human papillomavirus:ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種率の減少によって、00年度以降生まれの女性の20歳子宮頸がん検診における子宮頸部細胞診異常率が上昇していること明らかにした。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20211220_1
この報告には、以下のような内容が書かれていた。
日本では、毎年約1万人が新たに子宮頸がんと診断され、約3000人が子宮頸がんで亡くなっている。
子宮頸がんの主な発症要因としてハイリスク型HPVの感染(16型・18型が約60%を占める)が挙げられ、感染を防ぐためには、HPVワクチンが有効であることがわかっている。
日本では10年度から中学1年生から高校1年生を対象に公費助成が開始され、13年4月から小学6年生から高校1年生を対象とした定期接種となった。
しかし、同年6月、厚労省の審議会で、「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛の発生頻度等がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」とされ、積極的勧奨差し控えが実施された。
これに対して、WHO(世界保健機関)をはじめとする多くの機関がHPVワクチンの安全性の問題を否定した。特に、WHOは15年12月に「HPVワクチンの推奨を変更すべき安全性の問題は確認できない」と発表した声明で、日本について「弱い根拠に基づく政策決定は真の被害を招きかねない」と述べ、HPVワクチンの積極的勧奨差し控えの継続を非難した。
17年11月、厚労省は、「HPVワクチン接種後に生じた多様な症状とHPVワクチンとの因果関係を示唆する新しい質の高いエビデンスは報告されていない」との評価を行い、21年11月に接種差し控えが終了した。
同大の研究グループは24の自治体(人口合計約1315万人)から、89~00年度生まれの20歳の子宮頸がん検診の結果(未受診者は21歳、00年度生まれは20歳のみ)、94年度生まれ以降の16歳までの累積接種率を収集。HPVワクチンの「導入前世代」と「接種世代」の、20歳時の細胞診異常率の推移を、「停止世代」である00年度生まれの細胞診異常率と比較した。
この結果、ワクチン接種率が62.1~71.7%だった94~99年度生まれの「接種世代」の細胞診異常率が3.52~4.12%だったのに対し、接種率14.3%だった00年度生まれの細胞異常率は5.04%と異常上昇していた。この異常率は、「導入前世代」の傾向から予想される率に近いものとなった。
研究グループは「20年度まで積極的勧奨差し控えが再開されなかったことにより、導入前世代である93年度生まれの罹患・死亡リスクと比較した場合、キャッチアップ接種や検診受診率の上昇がなければ00~04年度生まれでは合計22081人の超過罹患、5490人の超過死亡が発生する」と予測している。
同グループは、「停止世代で観察された細胞診異常の上昇は、積極的勧奨差し控えにより接種率が激減したことが原因であると考えられ、停止世代の女性へのキャッチアップ接種と強力な子宮頸がん検診受診勧奨の重要性を示している」とした上で、「適切な対策が取られなければ、積極的勧奨の差し控えによって接種率が激減した停止世代における将来の子宮頸がんの罹患率・死亡率の上昇が現実のものとなる」と警鐘を鳴らしている。
この論文は21年12月14日、総合医学誌のオンラインジャーナル「The Lancet Regional Health – Western Pacific」に公開された。
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