『エヴァ』他抑え伊藤智彦監督の21年BEST1は『少女☆歌劇レヴュースタァライト』!
#映画 #アニメ
19年公開の映画『HELLO WORLD』が中国で人気に!
ーー伊藤さんご自身のお話もお聞きしたいのですが、今年はいかがでしたか。
伊藤:日本では19年に公開された映画『HELLO WORLD』が、おかげさまで中国で人気になりました。こんな込み入った話を中国の観客がどう理解しているのか。80~90年代の日本のアニメ界隈的な見方をしているのかもしれません。
Bilibiliの方からは「コアファンは日本のアニメファンよろしく手厳しく言っているけれど、もっとライトな人が見ている」と聞きました。中国のセンター試験にあたる「中国大学統一入学試験」が終わった直後の6月11日に公開されて、気晴らしに見に行った子が多いそうです。事前の興行収入の予想は1億元(約17億円)より下でしたけど、実際はもう少し伸びて、1.37億元(約24.5億円)までいきました。
先ほど映画の宣伝の話をしましたが、中国では公開の許可が降りてから、実際に公開されるまでの時間が短いらしいんですよね。早い場合だと、許可が降りてから2週間後に公開と言われるので、宣伝はなかなか難しい。『HELLO WORLD』は新型コロナウイルスの問題もあり、なかなか公開されず、その期間はちょこちょこと宣伝する機会がありました。中国では最初にものすごい数の映画館で映画が上映されますが、十分な宣伝もないためお客さんが入らず、公開が終わってしまう場合が多いと聞いています。
ーーお仕事的にはいかがでしたか。
伊藤:今年は人の手伝いを多くしました。『僕だけがいない街』で助監督だった石井俊匡くんのシリーズ監督デビュー作『86―エイティシックス―』で絵コンテと演出をやり、あとは未発表作品ですが、知人が監督デビューするので、そちらでも絵コンテをやりました。『富豪刑事 Balance: Unlimited』のときにコンテやってもらった津田尚克さんが1月スタートの『東京24区』の監督をするので、そのお手伝いをしたり、あとはもう一人監督デビューする某アニメーターの方の作品を少しだけお手伝いしました。
自分自身の仕事としては来年に向けて新作アニメの準備と並行して、漫画の原作を開発しています。春くらいに発表できる予定です。もともとはアニプレックスのスクリプトルームで動かしていた企画だったんですが、ストレートに映像化が難しくなったんです。ただ、気に入っていた話だったので、知り合いの出版社の編集者に相談し、マンガでやることになりました。
これまでと違う試みをしないと、今はいきなりアニメ、映画なりでオリジナル作品を作って、ヒットさせるのが難しくなっている。世に広まっていく感じをどう出すかを気にしていますが、地味な企画であればあるほど難しい。アニメがファーストウインドウでなくてもいいや、と。20年仕事をしてきて知り合いも増えてきているので、人の力を借りて他の場所からスタートさせて、最終的に映像化したいな、という感じです。ただ、いざアニメになりますよとなっても僕は監督はしないかもしれませんけど(笑)。原作者ポジションでキャスティングと音響現場にしか姿をみせないとか……。
ーーキャスティングには関わりたいんですね。
伊藤:そこは握りたいですね。アニメで数少ない他力本願でいられる瞬間ですから、主役くらいは。総監督をやるくらいなら監督に任せたいと思ってます。これまでは原作者に言われている立場だったので、自分が原作者として言う立場になると、どういう景色なのかを見てみたいですね。ただ、現場の人手が足りなくなったらピンチヒッターとして出る準備は万端にしておきます。
伊藤智彦(いとう・ともひこ)愛知県出身。アニメーション演出家、監督。細田守監督に師事し『DEATH NOTE』で監督助手、『時をかける少女』で助監督、『サマーウォーズ』で助監督を務める。2010年『世紀末オカルト学院』で監督デビュー。その後、数多くのテレビ、劇場作品で監督を務める。代表的監督作品は、『ソードアート・オンライン』、『劇場版ソードアート・オンライン~オーディナル・スケール~』『僕だけがいない街』『HELLO WORLDなど』。最新作は2020年にノイタミナで放送された『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』。
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