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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 伊藤智彦監督BEST映画『スタァライト』
伊藤智彦監督と振り返る21年のアニメ業界

『エヴァ』他抑え伊藤智彦監督の21年BEST1は『少女☆歌劇レヴュースタァライト』!

『閃光のハサウェイ』はわかりやすさを求める流れとは真逆

ーー今年の映画興行収入を振り返ると1位はシンエヴァで、2位は『名探偵コナン 緋色の弾丸』、3位は『竜とそばかすの姫』と非常にアニメが強い年でした。10位にも『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールドヒーローズミッション』が入っていますし、16位の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』も興収20億円を超えました。

伊藤:『ヒロアカ』の長崎健司監督はマッドハウスの同期なので嬉しいです。『閃光のハサウェイ』はみんなが思っているガンダムがアップデートされるという、エポックメイキングなことが起きました。今までのようにMSで切り合って、その上にパイロットの顔が出て叫ぶという演出ではなく、リアルな戦闘描写でMSがまるで戦闘機のような扱いになっている。最後のΞガンダムとペーネロペーの戦闘シーンもひゅっひゅっと飛んでいるだけで、手足はどうでもいい。そもそも『閃光のハサウェイ』はこういう戦争があってというような細かい説明をしない。ガンダムだからできることだと思いますが、「不親切」にあえて作っているところはうらやましいですね。

ーー「わかりやすさ」を求める今の流れの真逆といえますね。古き良きオタク文化といいますか、「知らないお前が勉強不足だ」という。

伊藤:劇中に出てきた緑の髪の女の子は誰なのか、『閃光のハサウェイ』を見ただけではわからないですが、知らない人も気になって調べてたように思います。また過去とのつながりを意図的にモヤっとさせている部分もあるかと思います。『閃光のハサウェイ』は、劇場アニメの『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の続きではあるんですが、劇中でハサウェイが一機をやっつけたとは誰をさしているのか。敵のことなのか、それともチェーンのことなのか。

ーー『閃光のハサウェイ』のヒロイン・ギギは難しいキャラですが、原作よりも大人っぽく描かれて、きちんとファムファタールになっていました。

伊藤:シャトルを降りる時の髪のなびきがすごく綺麗でやられます。そりゃあギギが出てきたら注目しちゃいますよね。上田麗奈さんの芝居もいい。『閃光のハサウェイ』は三部作であと2作やりますけれど、小説版とはエンディングを変えてくるのでは……?、と思ってます。その場合、『機動戦士ガンダムUC』のタイムラインと絡めるんじゃないかと。続編である『機動戦士ガンダムUC2』の制作も発表されていますし、サンライズの小形尚弘さんは考えそうだなと思ってます。

ーー2021年は大作ばかりでなく、『サイダーのように言葉が湧き上がる』『アイの歌声を聴かせて』、厳密には昨年末公開ですが『ジョゼと虎と魚たち』など、劇場版アニメの秀作が多い年でした。

伊藤:『君の名は。』以降の企画が出てきたんだなと思います。いろいろとバラエティーに富んだ劇場映画が見られた年でした。直近だと『フラ・フラダンス』がありますね。『アイの歌声を聴かせて』は見ていて、面白いなと思いつつも、ややどこに向けて作っているのだろうかと思い、考えていました。主人公たちの声優は、土屋太鳳、福原遥、工藤阿須加と一般向けをイメージさせつつも、キービジュアルやキャラのデザインはややアニメファン向きになっている。。なので、結果的にそういうアニメ好き、いわばガルパンおじさんが「俺たちが盛り上げるぞ」という映画になったなと思ってます。このあたりの作品は予告編をどう作るかなど、プロモーションの難しさを感じました。

ーー『漁港の肉子ちゃん』も海外での評判が非常に高い作品でした。

伊藤:『肉子ちゃん』は明石家さんまさんの企画・プロデュースの作品でしたが、さんまさんどうこうではなく、もっと作品力だけで押していけたのではと思います。伊集院光さんもラジオで号泣したと話していました。アニメは『海獣の子供』のチームが作っているので、出来栄えは素晴らしいのですが、やはり宣伝のやり方は難しいですね。

 また、こうした「エヴァ」や「ガンダム」などコアファン以外のターゲットを目指した作品が広がりづらいのは、コロナのこともあると思いますが、日本が貧しくなっているのではとも感じます。やはり映画って高いんだなって。見にいくんだったら損をしたくないので、『竜とそばかすの姫』であったり話題作を見に行く。特に今年、コロナ前と比べると、洋画はぜんぜんお客さんが入ってないんですよ。

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