トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ  > ヨネダ2000は天才の領域!?

ヨネダ2000は天才の領域!? 「THE W 2021」遅ればせながら元芸人が全ネタレビュー

Aマッソが見せた漫才コントの進化形態

最終決戦 Aマッソ

 前回もプロジェクションマッピングのネタをしたが、それは置いといて今回だけのネタでレビューさせてもらうと、かなり面白かった。

 漫才コント師は自分たちが想像していることをいかに、お客さんに同じことを想像させるかというのを目標にしている。このネタはまさにそれを体現しているネタである。

 想像ではなく、絵として表現することによりお客さん全員の想像を共通にし、笑いに変える。さらにはプロジェクションマッピングを使うことにより笑いを足すことも出来る。

 これは漫才コントの最新形態かもしれない。

 ただ後半、いちばんボケが盛り上がる部分で長渕剛を使ったところが惜しかったと思う。なぜ今長渕だったのか。この部分のボケが今の女性に刺さるものであれば、順位が変わっていたのではないだろうか。さらに言えば、オチの前で一回沈む部分がある。それはオチ台詞を選ぶというシーン。面白そうなボケではあるが、せっかく盛り上げたのを落ち着かせるくらいなら無くて良かった。

 どうしてもやりたいなら「もうええわ」では無いつっこみを選ぶべきだ。そして笑いに包まれて終わった方が良い。勿体ない。

天才ピアニスト

 最終決戦も憑依型のコント。レジ打ちのおばさんが買い物籠からお客さんのレシピを当てるというネタで、唯一当たらない客との闘いが始まる。

 いちいち照明が消えるオムニバス形式なので、ストーリーの進み方はとてもスマートなのだが、笑いが暗転する度に落ち着いてしまうのが弱点。さらには暗転している最中にお客さんは、次はどういうボケが来るか、少なからず想像してしまう。その想像を越えなければ笑いが落ちてしまうし、越えすぎてしまうと訳がわからなくなってしまう。オムニバス形式はどの程度スマートに流して、どの程度ぶっ飛ばすかの度合いが重要になるのだが、今回のネタは後半飛ばし方が弱かったような気がした。

「THE W」の最終決戦で、泣いても笑ってもこれで終わりなのだから、安全パイを狙った置きに行くボケではなく、もっと破天荒で名前の通り、誰も思いつかない天才的なボケを試してみても良かったのではないだろうか。

 コントも漫才も最後に勢いが失速してしまうと笑いが減り、審査員の印象が悪くなる。

 オチに自信があったのか、オチ前の空気感を静か目にしたのが失速の原因だ。そしてオチもそこまで強くない。レジ打ちのおばちゃんが修行してきて、かごに入っている商品を片っ端から当てに行って、全部外れてると思いきや当たってるとかの勢い終わりで良かったかもしれない。

 天才ピアニストは日常を切り取るのが上手いだけに、日常からかなり脱線した非日常を演出できるようになればさらに強くなれる。

オダウエダ

 最終決戦でもコントの名前を言って始まるのかと思いきや、名前の前に「もう一度よろしくお願いします。オダウエダです」と暗転中に言い、そして「コント、ストーカー」とタイトルを叫んだ。

 この時点で「また何かしてくれるのではないか」という期待感に包まれたが、スタートした瞬間、意外と普通のストーカーのネタかと思った。だが、そこはオダウエダ。カニのストーカーという何とも曲がりまくった変化球ネタ。あとはひたすら大声で、どれだけカニを愛しているかを叫び、最後は泡を吹いて死んで終わりという奇抜さ。正直ネタのクオリティとしては低い気がするが、2人のキャラ、ネタの発想力、ボケの引き出し、どれも想像を越えてくる。越えるというより違う場所にいる。

 比較的ベタな笑いが好きな僕はあまり笑えなかったかが、それでも後半は思わず吹き出してしまった。ボケの面白さというよりは、オダウエダ2人の力技で笑ってしまった感がある。

 結局優勝したのは、このオダウエダだ。

 僕としてはAマッソが一番面白いと思った。

 特に最終決戦のネタは全漫才コント師のやりたいことで、まだ完璧ネタとは言えないがある程度良い形になりお客さんもかなり笑っていた。もう大きく変化することが無いと思えた漫才がまだまだ進化をする余白があると言っているようで、漫才コントの未来がとても明るくなったように思えた。

 今回の決勝は正直順番も影響したと思う。

 Aマッソの順番が後半だったら、いやオダウエダがトップバッターだったら、この大会の優勝者は変わっていたかもしれない。それくらい僅差で誰に転んでもおかしくない大会だったと思う。

 “女芸人No.1決定戦”と銘打たれているが、これだけありとあらゆる方法でお笑いを見せてくれるこの大会は、性別を取っ払った芸人No.1決定戦と言っても過言ではない。

 M-1グランプリやキングオブコントの決勝で、彼女たちが披露したネタがどれくらいの評価をされるのか見てみたい。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2022/02/04 17:14
12345
ページ上部へ戻る

配給映画