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ヨネダ2000は天才の領域!? 「THE W 2021」遅ればせながら元芸人が全ネタレビュー

なぜヒコロヒーは0ポイントになってしまったのかを考える

ヒコロヒー「真面目な息子」

 今年ブレイクし、テレビで見る回数も多くなり、この決勝戦で一番メジャーな芸人ではないだろうか。ほかの芸人とは大会に参加するモチベーションがいささか違うかもしれない。

 普通は売れる為、メジャーになる為にこういった賞レースに参加するが、彼女はその必要がない。

 ではなぜ大会に参加するのか。それはネタが好きだから、どんなに忙しくてもネタと向き合っているからだそうだ。何とも素晴らしい芸人像ではないか。

 設定はパンクロックに目覚めた息子が、どうやら真面目で違和感があるというネタなのだが、まず最初に、自分の年齢をいくつに設定しているのか疑問を持った。大学生くらいの息子がいる母親に見えない。

 ネタ自体も冒頭数十秒設定を説明するだけに使っていて、ボケが一切ない。あの設定ならひとつでもいいからボケをいれるべき。

 ネタを作るのが好きだとは感じたが、明らかに芝居力が追いついていない。セリフ自体も覚えたセリフを矢継ぎ早に、一定のリズムで言うだけになっている。

 進学で悩んでいる息子に対する母親が矢継ぎ早にしゃべり続けるだろうか? しかも母親としてパンクロックを辞めさせたいのかどうなのかが、わかりづらいように感じた。後半、息子の夢を認めるというセリフがあるので、最初は辞めさせたかったというのは理解できるが、それなら前半ちゃんと辞めさせるようなセリフや感情をボケに混ぜなければいけない。

 そして決定的なのは、対面している息子を全く想像出来なかった。会話をしているという設定なら、相手が何か喋っているときは少し無言になったり、少し表情が変化したりするはずだ。つまり会話ではなく、ただの考えたセリフを言っている人になっていたという事だ。

 頭の良い芸人に多いのだが、同じようなことを言葉を変えて何度も伝えてしまうということがある。このネタがまさにそれで少し違った表現で何度も息子が真面目だと言い、気が付いたらお客さんが飽きている。残念ながら審査員の票がもらえなかったのはその辺りが原因なのではないだろうか。

 この勝負はヒコロヒーが大会唯一のゼロポイントとなってしまい、天才ピアニストの勝利となった。

スパイク「男探しにクラブに来た女性」

 前回決勝戦進出が決まっていたが、コロナで辞退したコンビとのこと。

 設定がクラブに来た2人組で1人は慣れていてもう一人は騙されて連れてこられて怒っている。怒り方が独特で、それ一本で笑わせようとしているように見えてしまった。

 動き以外のボケが大ボケではなく小ボケ中心だったので、後半そこまで笑いが広がらなかったように思えた。

 いちばん気になってしまったのは、松浦さんのつっこみ方だ。

 ボケの小川さんが比較的ファンタジーなボケをしているので、松浦さんはどちらかというと日常的なつっこみをした方が良い。それは声を小さくするとか言っているのではなく、大声でも良いから相手に言うという事だ。なのになぜか松浦さんは客席を向いてつっこんでしまうのだ。

 これは漫才のつっこみ方でコントだと違和感になってしまう。これをやる芸人は少なくないが、ロバートのように客がいる前提で、ボケ自体も客に向けてやるような感じだとつっこみも客に向けてやっても違和感はない。ただスパイクの場合、小川さんのボケがファンタジーなだけで客に向けてはボケておらず、松浦さんにボケている。という事は松浦さんが客席側につっこむと、クラブの壁や何か別のものに喋っていることになり、お客さんの想像している空間を壊してしまうのだ。

 そうなるとお客さんはコントに入り込むのが難しくなり、空気が散漫になってしまう。

 なのでお客さんの方を見たいなら、誰か特定の人に言うとか、カウンターを客席側にしてボーイに言うなどのちょっとした工夫が必要だった。コントはそういった微妙な空気が笑いを左右する。

 天才ピアニストが暫定一位の座を守った。

Bブロックの最後Aマッソ「電話対応」

 去年の負けが悔しすぎて目が覚めたと。ネタの作る方法を変えたようで、今までは新しいネタを量産してきたが、今回は一本のネタを磨いたらしい。

 ネタは会社の上司と部下で、電話対応のへりくだり方でボケていくといった、かなりベタな設定。

 電話対応では上司も呼び捨てにするが、実際も呼び捨てにしてしまうようなボケは正直めちゃくちゃやりこまれており、散々見てきた使い古された手法なのだが漫才でなくコントにしたことがポイント。

 漫才だと2人の位置関係は平等なのだが、コントにすることにより、上下関係がきっちりと構築できるのでタメ口や呼び捨てがより効果的になる。そしてAマッソは漫才もこなすコンビ。散々漫才で使い古されたネタだが、前半をコントにしたことにより、後半を漫才風にしたとしても、上下関係は崩れずに漫才ならではのテンポと爆発力を手に入れることが出来るのだ。

 漫才コントだと力が半減される設定だが、コント漫才という新しいジャンルにしただけでこんなに笑いが倍増するとは。そのシステムを見つけたAマッソ天晴!

 後半の台風のようなボケと笑いの量は賞レースに向いていた。

 安パイだと思われていた天才ピアニストを破り、AマッソがBブロックを突破した。

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