ヨネダ2000は天才の領域!? 「THE W 2021」遅ればせながら元芸人が全ネタレビュー
#THE W #檜山豊
アマチュアトリオが見せた“お笑い熱”の大切さ
Bブロック一組目天才ピアニスト「ドアの強度チェック」
設定はドアの強度チェックのために扉を開け閉めし、その開け閉めする度に何かのキャラになりボケていくというもの。
ドアの強度チェックなどという職業が本当にあるかどうかわからないが、あってもおかしくない。そしてこんなことをしていたら面白そうという、何とも魅力的な設定だ。
設定もさることながら2人とも芝居力が高い。関西と言えば漫才のイメージだが、これだけコントをお芝居として出来るのは凄いことだ。
ツッコミの竹内さんは芝居はうまいが、ツッコミの時だけ芝居ではなく漫才の間でやっている。そうすることによりコントに軽快さが生まれる。まさに漫才とコントの良いとこ取り。何とも羨ましい限りだ。
ボケのますみさんは憑依型というだけあって、実際にその工場で働いているおばさんに見える。しかも普通の芝居ではなく、ほんのすこし誇張したコント芝居であり、それを見ている人に感じさせないのも芝居が上手い証拠である。さらにコント中にそのキャラになり切って芝居をする。
つまり2重芝居をするシーンがあるのだが、それも別のキャラになるわけではなく、そのおばちゃんが芝居をしているように見えるのだ。しかも自然に。これは特定の人間にしかできない高等技術で、僕は身に着けられなかった。これが出来る人は無意識でやっている人が多く、ますみさんもそのタイプだろう。
ネタの設定の良さ、ボケのバランス、全てが計算されまとまっていたのだが、どこかこじんまりとした印象を受けた。こういうタイプは最初から最後まで70点~80点のネタを作る。それ自体凄い事なのだが、稀に最初は10点~20点くらいのボケなのに最後だけ100点を叩きだす芸人がいる。そういう芸人とぶつかったときに、前者の芸人は負ける可能性が高い。それなので天才ピアニストにはもっと舞台を広く使ったり、ドアを破壊するくらいの勢いが欲しかった。そうすれば前半70点、後半100点のネタになったのではないだろうか。
ネタを作る努力も大事だが、天才ピアニストには自身の限界を突破する為の冒険心も必要だ。
女ガールズ「悩み相談」
決勝戦唯一のアマチュアトリオ。
ひとりは舞台役者、ひとりは出前館でバイト、そしてもうひとりは公務員というただの仲良し3人組だという。
紹介VTRでは恐れを知らぬ素人の怖さと表現されていたが、素人の怖さは全くなく、それどころか素晴らしさを感じた。
正直アマチュアというだけあって、ネタは粗削りな部分が多々あった。
例えばツッコミの楠本さんのキャラは強いが両サイドの春山さんと吉田さんはキャラが無いとか、漫才っぽくしているだけで、ただセリフを一生懸命喋っているとか、目線が定まっていないとか、声が小さい部分があるとか……。でも、そんなことはどうでも良いと思わせるほど、お笑いに対する情熱が溢れていた。
ネタには、お客さんを何としても笑わせるという情熱がふんだんに入っていたように思える。
例えばお客さんを飽きさせないように、ネタを前半ブロックと後半ブロックに分けていたり、3人の良さを出すために、ツッコミとボケが前半と後半で入れ替わったり、そしてボケの種類もベタなボケから、あるあるネタ、キャラボケなどを混ぜてみたり。普段舞台を踏んでいない分、それを補おうとするパワーを感じた。僕は大舞台でネタをする彼女たちの姿に感動すら覚えた。ジャッジするまでもなく勝つことは無いとわかってしまったが、そのお笑いへの情熱を持ったまま、また4度目の参加をしてほしいと思う。最強のアマチュア芸人となって。
採点はさすがプロ。天才ピアニストが勝利し、暫定1位に。
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