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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 300本以上から選ぶ2021年映画ベスト10

年間300本以上観る映画ライター・ヒナタカの2021年映画ベスト10

古田新太が敵意むき出しで罵声を浴びせまくる『空白』

8位:『パーフェクト・ケア』

 本作で何よりも凄まじいのが、主人公が邪悪の化身と断言できる、もはやスガスガしく思える域に達していることだろう。彼女は後見人の立場を利用して、高齢者たちからカネを搾り取りまくる詐欺師。それでいて裁判でも完全に言い負かせる口の上手さもあって、とにかく「奪う側」「勝つ側」に回ることだけを考えていく。

 全く共感はできないし「あー早く地獄に落ちないかな」と思いながら観るわけだが、その後の物語は全く予想できない方向へと転がっていくので、1秒たりとも見逃せないほどの面白さに満ち満ちていた。

 主人公はあいも変わらず身寄りのない老人から持ち家も遺産も奪い取ろうと調子に乗るのだが、あることが引き金となり、悪人たちによるエクストリームなパワーゲームが勃発する。

 そこからはネタバレ厳禁、可能であればあらすじも予告編も何も見ずに観ることをおすすめする。主演のロザムンド・パイクが素晴らしいのはもちろん、『ピクセル』や『スリー・ビルボード』でも強い印象を残したピーター・ディンクレイジも最高だ。観た後は「こういうヤツに騙されないようにしよう」と老後のことをしっかり考えるきっかけになるかもしれない。現在はレンタル料が1900円と割高ではあるが、各種配信サービスで鑑賞できる。

7位:『空白』

 スーパーの店長が追いかけた、万引きをした女子中学生が車に轢かれて死亡したため、その父親が真相を突き止めるべくモンスターと化す、というあらすじだけでも胃がキリキリと痛みそうなドラマだ。

 とにかくその父親を演じた古田新太が敵意を剥き出しにして、罵声を浴びせまくる様が本気でキツい(褒めている)し、それと向き合わざるを得ない役を演じた松坂桃李というその人のメンタルを心配してしまうほどにしんどかったのでもう二度と観たくない(褒めている)。

 そのほかのキャラクターも強烈で、特に藤原季節と寺島しのぶが演じる役は「こういう人いるいる」と思える人物でありながら豊かな人間性も感じる重要な存在であり、観たら2度と忘れられなほどのインパクトがあった。モチーフとなったのは、古書店で中学生が万引きを通報され逃走中に死亡した実際の事故であり、吉田恵輔監督は「誰にとっても不幸しかない結末に救いのなさを感じてやるせなかった」「一体何が彼らにとって救いになるのかを、物語にしてみようと思った」ことなどから映画化を決意したという。とことん観客を惑わす物語がすごい密度で絡み合う、最悪で最高な映画体験を期待する方におすすめしたい。現在は各種配信サービスでレンタルでの鑑賞ができる。

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