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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 元芸人が「M-1 2021」を全ネタレビュー

オズワルド伊藤のツッコミ技術の真髄を見た!元芸人が「M-1 2021」全ネタレビュー

まだ4年目のももは、あと11回も挑戦できる!

10組目 もも「なんでやねん!お前○○顔やろ」

 お互いの見た目をいじりながらそれだけで漫才を進めていくスタイル。

 結成4年目という事もあり、登場して数十秒は緊張感に包まれていたが、笑いが起きるにつれて本人たちのリラックスし本来の力を発揮していったように見えた。しかも両ボケ、両ツッコミという今どきの形。声量もあって、お客さんの方を見る余裕もあり、漫才としてしっかりと形になっている。

 これで結成4年かと驚愕した。

 しかもネタ自体後半になるにつれてきちんと盛り上がり、ピークを最後に持ってくるようにしているなど僕が若手の頃には考えられないテクニックを持っている。

 僕たちが若手芸人をしていた20年以上前は、テレビで若手芸人が漫才をやっている姿を見ることが少なく、ほとんどの若手芸人が、どうやったら漫才を形にできるのか試行錯誤していた。今は逆に漫才を見る機会が増え、若手芸人の漫才の面白さの平均値は確実に、当時より上がっている。ある程度面白い漫才が出来ることが当たり前になっている今、6000組の強豪を抑えて決勝に来るというのはもはや天才といっても過言では無い。

 ただ惜しいのはまもる。さんとせめる。さんを比べたときに声量のバランスが悪い事だ。

 後半波に乗ってきてからの声量は2人とも同じくらいなのだが、前半の盛り上がり前の声量は、圧倒的にせめる。さんの方が大きいのだ。そうなるとまもる。さんのセリフが耳に入ってこなくなる可能性が高い。大きい声が出ないわけでは無いと思うので、なるべく声量を同じくらい大きくなるよう意識したほうが良い。特に合いの手とか大事じゃないセリフを意識するように。

 それとひとつめの笑いまでが異常に長い。「○○顔やろ!」までひとつの笑いも無かったように思える。大阪弁なので聞けないことは無いが、どうせなら笑いが欲しい。両ボケ、両ツッコミなので、その辺りも活かし、メインのボケに行く前に、両ボケ、両ツッコミというのをわからせる笑いがあると、もっと早めに大きな笑いに繋がるのではないだろうか。

 まだ4年目。あと11年も出場するチャンスがあるのだ。頑張ってほしい。

 今回のM-1グランプリ2021は、芸人の若返りをはかっているように思えた。

 そのせいか、どうしても似たような笑い、似たようなツッコミ、似たようなテンポの芸人が揃ってしまい、結局は経験値があり、スタイルが違う3組がファイナルステージへ進出したのではないだろうか。

 芸人の若返りなど意味がない。それを50歳の芸人が証明してくれた。

 僕は本来結成15年以内というくくりすら、いらないのでは無いかと思っている。16年目、17年目の芸人でも常に進化し、新しい笑いに挑戦しているからだ。しかし結成15年以内というのが変わらないのならば、次回は若返りをはかるより、スタイル、ボケ、手法などがバラバラな10組で決勝を争う姿が見てみたい。

 漫才にはまだ楽しめる可能性があり、進化する余白があると証明してほしい。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2022/02/04 17:15
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