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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 石黒浩が開拓する「ロボットと人間」の尖端

石黒浩が開拓する「ロボットと人間」の尖端──アバターで働き方を変える“仮想化実世界”とは?

大阪万博でメタバースと実世界をリンクさせる

──最近バズワードと化している「メタバース」とロボット研究は、何かかかわるところはあるのでしょうか。

石黒 AVITAは「実世界で使うCGのアバター」をやるために作った会社です。インターネットの中にさらに新しい仮想世界を作るのがメタバースです。そこに街を作って、商店を作って、商業活動を行えるようにして、だんだんと実世界と仮想世界の境界がなくなっていく未来が構想されている。

 対して僕らがやろうとしているのは、実世界でアバターを使って別の場所で働くという「仮想化実世界」の実現です。これまで実世界で生身の身体はひとつしかなかったけれども、複数アバターを持てば実世界の中でも事実上、複数の世界で働けるようになるわけです。ひとつの場所が居づらければ、ほかのところに行けるような世界が実現できる。

 人間はもともとひとりでいるとき、友達といるとき、仕事しているとき等々で、かなり異なる振る舞いをしています。いわゆる「分人」ですね。僕らは、そういうシチュエーションごとに存在する複数の「異なる自分」としての振る舞いがよりやりやすくなった未来を作ろうと思っている。

 例えば、僕も幼稚園の子どもと話すときにコミューやソータのようなかわいいロボットの見かけを使って声質も変えて話しかけると、人間としての中身も変わった気がするんですよ。僕ですら子ども相手に「このパン、おいちいよ」とか話しかけることができる。だけど、僕が生身の身体で「おいちいよ」とか言ってたら、おかしいでしょ?

──(笑)。

石黒 僕は接客をやったことがなかったけど、やってみて接客業が好きな人の気持ちが少しわかった気がした。決して深い人間のつながりではないけれども、喜んでもらえると嬉しいんだな、とかね。そうやって違う見かけでいろんな場所で過ごす、働いてみることができれば、人生の幅が広がる。

 仮想世界を使って「もうひとつの世界」「もうひとりの自分」へとアプローチしたのがメタバース、対して生身の自分とは異なる見かけや声をもつアバターを使って実世界からアプローチしようと思っています。

 万博ではメタバースと実世界をリンクさせて楽しめるものを披露する予定です。

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