BTSやBLACKPINKが気候変動リスクを訴え始めたわけ 韓国芸能界のビジネス変化
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SDGs(持続可能な開発目標)が世界中で注目を浴びるなか、多くの企業がESG経営に乗り出している。ESG経営とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業の管理体制」に配慮した経営のこと。言い換えれば資本主義のルールのなかで、強欲に利益だけを追求するのではなく、環境や社会に良い影響を与えつつ、自社の透明性や社会規範を守っていく経営の在り方を指す。なお、CSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)などの類語もあるが、ESGは企業の利益と世の中への好影響を両立させていくという意味合いが強く、ビジネス業界においては新たな概念として広まりつつある。
ESG経営に乗り出す企業が属する産業は多種多様だが、韓国では芸能・エンターテインメント業界もこの潮流に敏感になっている。世界的な人気を誇るBTSがアメリカ・ニューヨークの国連本部で「SDGモーメント」というイベントに出席してスピーチをしたことが、日本でも大きな話題に。またBLACKPINKも、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開催中に、関連するメッセージを発信するなどしている。彼らがSDGs関連の広報大使を買って出るのはその象徴的な動きといえよう。
韓国誌記者R氏は言う。
「韓国芸能事務所が、国内だけでなく世界をターゲットにするなか、SDGsやESG経営はアピールやポーズでなく、戦略的にビジネスに組み込むべきテーマとなっています。韓国アイドルを支持する世代は非常に若く、一般的にはサステナブル・ネイティブと言われている。ファンたちは自分が推すアイドルには、世の中に対して道徳的であってほしいと願っている。そして、その考えを無視して成功できないと、事務所側もアンテナを立て始めているのです」
なお、アイドルが国連などと行動を共にするということは、韓国芸能事務所のESG経営の兆候のほんの一部に過ぎない。他にも、グッズを通じて環境に配慮しようという動きも活発化している。
例えば、YGエンターテインメントでは最近、環境にやさしい素材でアルバムや企画商品を制作している。ボーイズグループ・WINNERに所属するソン·ミンホのソロ作品「TO INFINITY」は、山林管理協会から認証を受けた用紙やエコパルプ、生分解プラスチック(PLA)などが素材として使用された。
また、20年8月にはBLACKPINKのデビュー5周年を記念したMD商品の一部を、環境に優しい素材で制作してもいる。「プロデュース101」というオーディション番組出身のチョンハも、アルバム包装材、歌詞カードに再生紙を使用している。
「全世界のKポップファンたちによって気候変動リスクに対応するためにつくられた『KPOP 4 Planet』というプラットフォームがあり、欧米メディアから注目され広く取り上げられ始めています。今後、世界を見据えるアイドルや事務所にとっては、SDGsやESG経営は避けては通れない道となりそうです」(前出R氏)
なお、台頭する新たな世代のK-POPファンからすれば、握手券や特典のために、他のバージョンを乱発したり、いたずらに売り上げ品数だけを稼ぐような商売はアウトということにもなりかねない。資源を無駄遣いし、地球環境にも良くないからだ。実際、韓国芸能界ではそのような議論も活発化してきたという。
ESG経営の問題は“道徳問題”として捉えてしまいがちだが、韓国芸能界では新たなビジネスの在り方をどう成立させていくかという問題として、改めて認識され始めていると言っても過言ではない。
昔から世界平和や地球規模の連帯を呼びかけるアーティストは少なかったが、韓国アイドルたちは意図せずともその実現を牽引する先鞭としての役割を担わされていきそうだ。
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