労働組合が減少し社会的影響力が低下…女性組合委員は増加傾向…数字の裏側
#労働組合
労働組合数の減少が止まらない。21年6月末現在の組合員数も減少しており、雇用者数に占める労働組合員数の割合である推定組織率も低下した。
厚労省は12月17日、「令和3年労働組合基礎調査の概況」を発表した。
それによると、21年6月 30 日現在の単一労働組合数は2万3392 組合で、組合員数は1007万8000人で、前年比で組合数は369組合(1.6%)減、組合員数は3万8000人(0.4%)減少した。単一労働組合とは下部組織(支部、分会等)がある労働組合を指す。
雇用者数に占める労働組合員数の割合である推定組織率は16.9%で、前年より0.2 ポイント低下した。女性の組合員数は347万人で、前年に比べ3万4000人(1.0%)増加、女性の推定組織率は12.8%で、前年と同水準だった。
直近5年間の労働組合の状況をみると、組合数は減少の一途を辿っている。一方で、組合員数は横ばい圏で推移しているものの、21年の調査期間(20年7月~21年6月)では直近5年間で最も大幅の減少となった。これは新型コロナウイルスによる雇用状況の悪化が影響したものと思われる。
一方で、女性組合員数は着実に増加を辿っており、女性の社会進出とともに、労働組合加入でも女性に比率が高まっている。(表1)
その一端はパートタイム労働者の労働組合員数の状況にも表れている。
単位労働組合のうち、パートタイム労働者の組合員数は136万3000人で、全労働組合員数に占める割合は13.6%となっている。単位組織組合は下部組織(支部、分会等)を持たない労働組合。
ただ、雇用状況の悪化の影響を受けやすいパートタイム労働者だけに、21年調査では新型コロナによる雇用状況の悪化で、組合員数では前年より1万2000人(0.8%)減少し、全労働組合員数に占める割合も前年より0.1ポイント低下、推定組織率も8.4%と前年より0.3ポイント低下した。(表2)
労働組合は衰退の一途を辿っている。組合数は84年の7万4579組合をピークに99年には6万9387組合、06年には5万9019組合、19年には4万9925組合と5万組合を割り込んだ。35年間で約2万5000組合も減少した。
組合員数も94年の1261万9000人から98年に1198万7000人、02年に1070万8000人、06年に996万1000人にまで減少した。その後は、徐々に組合員数が増加して1000万人台を回復し、横ばい圏で推移している。
労働組合数減少の背景にはさまざまな理由がある。労働組合活動に前向きだった労働者が高齢化し定年退職している半面、無関心な若い社員が増加していることや、正規雇用者が減少し、非正規雇用者が増加したこと、あるいは産業構造が変化し、IT関連企業などの若い企業が増加し、これらの企業には労働組合がない企業が多いこと等々だ。
一方、雇用環境の悪化やパワハラ、セクハラなどハラスメントに対して、雇用条件の改善などを求める労働者の意識変化などにより、組合員数は徐々にだが増加している。特に、パートタイマーやフリーランスで働く労働者が、企業の労働組合ではなく、単独で組織されたユニオンなどに加入していることも組合員数増加の要因のひとつとなっている。
こうした傾向は、労働組合の上部組織と言われる主要団体の状況にも表れている。主要団体別に産業別組織を通じて加盟している労働組合員数(単一労働組合)をみると、すべての主要団体で組合員数が減少している。
日本の賃金が上昇しない要因のひとつとして、労働組合運動の衰退、労働組合数の減少も指摘されている。労働組合による経営状況の監視、労働者の待遇改善の経営者に対する要求など、労働者の力が低下しているとの見方だ。
労働組合は、労働組合法によって認められた労働者に与えられた権利だ。労働組合活動が衰退することなく、労働者の地位・待遇が改善に役立つことを期待したい。
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