オダウエダの優勝、理屈への渇望をねじ伏せる理屈なしの笑い
#テレビ日記
オダウエダ・植田「日テレごとぶっ壊しまーす!」
今回の『THE W』の最終決戦は、AブロックとBブロックを勝ち上がった勝者に、視聴者のdボタンで最も票を集めた1組を加え、計3組で争われた。その「国民投票枠」を射止めたのは、Bブロックで強い印象を残した天才ピアニスト。『M-1グランプリ』の敗者復活なども含め、最近の賞レースの視聴者投票の結果は単純な人気投票にならないことが多い印象を受けるのだけれど、どうだろう。気のせいだろうか。
最終決戦でAマッソが披露したのは、プロジェクターを使った漫才だった。去年、ゆりやんレトリィバァに惜敗した際に見せていたのと同じ形式のネタだ。『M-1』でも『キングオブコント』でも出せない、『THE W』というなんでもありな大会でしか披露できない形式のネタ。去年のリベンジという物語も引き寄せる狙いだったのかもしれない。ただ、去年と同じ形式のネタなら、新規性に欠けるぶん進化を印象づける必要もあったように思うが、その点、少しわかりにくかったかもしれない。
天才ピアニストは、スーパーのレジ係が客の買い物から今晩の献立を当てるという設定のコント。1本目と同じく、ますみのキャラクターはおばさん。最初はいぶかしげだった客の竹内も、途中からおばさんとのクイズを楽しみ始める。確かな演技力とネタの構成力。それでいて細かい笑いどころもすくっていくコントを見せた。ただ、コント中の暗転によってその都度リセットが入り、笑いの積み上げが絶たれたようにも感じる。
オダウエダは「カニのストーカー」と題されたコント。女性がコロッケを食べている → おじさんが「断面図を見せて」などと声をかける → おじさんが落とした写真から盗撮を疑う → 女性がおじさんの家に侵入する → おじさんが現れる → 壁にカニの写真 → おじさん「そやで、カニのストーカーやで」 → 女性「やっぱり、カニのストーカーやー!」……。ここまでで序盤。序盤にして筋だけ追っても意味がわからない。キテレツな世界観で最後まで突っ切った。ただ、1本目とは違いわかりやすいツッコミ役を排したコントは、ハマる人には一層ハマるが、ついて行けない人は一層ついて行けないだろう。
3本ともまったくベクトルが違うネタ。同じ人でも見る日によって評価が変わってくるのではないか。一方で、2つめのネタはどの組も決定的な決め手を欠いていたようにも思う。どこが優勝してもおかしくないところ。3-2-2と審査員の票も割れ、結果、オダウエダが優勝した。
私はキテレツなネタが好きなので、オダウエダの優勝にまったく異論はない。彼女らの1本目のネタは決勝全体を通して一番笑ったし。けれど、今回の結果に異議を申し立てる声も多いようだ。確かに、誰をも納得させる決め手に欠いたように見える最終決戦。審査員の票も割れ、結果の理屈を知りたがるというのもわかるような気はする。優勝が決まったあとに審査員の講評がなかったのも、理屈への渇望を刺激したのかもしれない。何にでも理屈をつけたがるのも難儀なことだ。――と、いろいろネタや番組の展開に理屈をつけてきた記事の終盤に言うのも難儀だが。
番組の前半、「すべてをぶっ壊してください」との視聴者からのメッセージに、「日テレごとぶっ壊しまーす!」と植田が答えていたオダウエダ。何かと理屈をつけたがる我々を、理屈のつかない笑いでねじ伏せてほしい。
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