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オダウエダの優勝、理屈への渇望をねじ伏せる理屈なしの笑い

Aマッソ・加納「なすなかにしさん、ありがとー!」

 Bブロックも、やはり1組目からクライマックスだった。天才ピアニスト。コンビ結成5年にして決勝初出場となった彼女たちだが、その顔は比較的よく知られているかもしれない。知られているといっても、その顔はたいてい上沼恵美子のモノマネだったわけだけれど。

 彼女たちのコントは、おばさんに扮したますみがドアを開けて「ちょっとアンタ、ご飯できてるよ」と呼びかけるところから始まった。ドアの外には、ツッコミ役の竹内知咲がポツンと立つ。ますみはドアを何度も開け閉めしながら「今日タコライスやで」「お母さん先食べてしまうよ」「何をしてんの!」などと言動をヒートアップさせていく。2人は親子なのだろうか? にしては、2人が着ているのは作業服なのだけど……。見る者が状況を飲み込めないところで、竹内がひと言。「ドアの強度チェック、普通にやってくれへんかな」。絶妙なタイミングでのまさかのタネ明かしが、大きなカタルシスと笑いを生む。

 その後も、ドアの強度チェックをしながらお芝居を入れ込んでいくおばさん。ますみが演じるそんなおばさんのキャラクターで最後まで突き進むのかと思いきや、本社の上司らしき人を演じる竹内が、おばさんの芝居がより良くなるよう、アドバイスを始める。コントが転調し、展開が生まれる。その展開を2人の確かな演技力が支える。

 あのおばさんは、なぜどうしても演技をしたいのだろう。本社の上司らしき人は、なぜおばさんの演技にノッてしまうのだろう。面白いコントは、登場人物のバックグラウンドを想像させる。一発屋の印象さえ残しかねないこれまでの上沼恵美子のモノマネは一体なんだったのか。そう思えるほど面白いコントだった。

 天才ピアニストは、その後に登場した女ガールズ、ヒコロヒー、スパイクを次々と打ち破る。最後に登場したのは、Aマッソだった。

 Aマッソは昨年の『THE W』で初の決勝進出。プロジェクターを使った漫才でセンスと面白さを見せつけた彼女たちだったが、ゆりやんレトリィバァのバカバカしい笑いの前に惜しくも敗れ去っていた。

 そんなAマッソが今回見せたのは、彼女たちにしてはとてもベタなコントだったように思う。わかりやすい。笑いやすい。コントの設定は、上司(加納)が新入社員(村上)に社外からの電話対応の仕方を教えるといったもの。一気に温度を高め、畳み掛けていく2人のやり取り。それが最高潮に達したところでの「それでは、また」(村上)、「なんで最後なすなかにしやねん」(加納)のやり取りが客席にハマる。

 天才ピアニストとAマッソの対決。審査員は4-3でAマッソを選んだ。センスを見せてきたコンビが、一転わかりやすいネタを披露してトロフィーを獲りにいく。“泥臭い”姿勢を見せる。今年の『キングオブコント』(TBS系)では、空気階段もそういったスタンスと戦略をとっていたように思う。そんな流れがあるのかもしれない。

 それにしても、Aマッソのネタに出てきたなすなかにしというワード。その名前を聞いた客席は笑いが弾けていた。一方、暫定ボックスでの天才ピアニストも、なすなかにし風のショートボケを繰り返していた。今年の『THE W』は、その場にいないはずのなすなかにしを、そこかしこに感じる大会でもあった。最終決戦進出が決まると、Aマッソ・加納は叫んだ。

「なすなかにしさん、ありがとー!」

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