『関ジャム』マイナー楽器紹介回にハズレなし! ボン・ジョヴィでおなじみトークボックス実演
#音楽 #関ジャム
12月12日放送『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)は「プロの技・音色 謎だけど……実はスゴイ楽器」特集であった。『関ジャム』はレアな楽器を紹介するこの恒例企画が、いつも圧倒的に面白い。最近はJ-POP系の企画ばかり続いていたので、余計に見れて嬉しい特集だった。
ボン・ジョヴィでおなじみのトークボックスは70年代に一斉を風靡
まず最初に紹介されたのは、トークボックスだ。楽器と専用のスピーカーをつなぎ、そこから出る音をホースを通して演奏者の口に送って口内で共鳴させ、楽器がしゃべっているような音に加工するエフェクターである。
マイナーな楽器を紹介する企画だが、トークボックスは有名だ。これを用いた曲として、番組ではブルーノ・マーズ「24K Magic」とOfficial髭男dism「たかがアイラブユー」、ボン・ジョヴィ「It’s My Life」が紹介されたが、他にもある。真っ先に思い浮かぶのは、ピーター・フランプトンの「Show Me the Way」だ。スティービー・ワンダーはライブ(「Close To You」等)で重用していたし、ジェフ・ベック「She’s A Woman」やエアロスミス「Sweet Emotion」での使用も印象的。70年代に一世を風靡した機器なのだ。他のトークボックス使用曲をざっと列挙してみる。
・「Superstition」(ベック・ボガート & アピス)
・「Livin’ on a Prayer」(ボン・ジョヴィ)
・「California Love」(2pac)
・「YOU AND ME」(キリンジ)
・「snow drop」(L’Arc~en~Ciel)
・「トラブルメーカー」(相川七瀬)
・「LUVRAW & BTB」(SUNSET)
また、似たような効果を与えるものとしてヴォコーダー(言葉を楽器音に置き換えて合成)とオートチューン(音程を矯正するもので矯正レベルを強くするとロボットのような声になる)があるが、その違いは聴くだけだとよくわからない。ボン・ジョヴィは実はヴォコーダーを使っていた気がしないでもないし、TMN「RHYTHM RED BEAT BLACK」での使用もトークボックスかヴォコーダーかで判断に迷う。クラフトワーク「The Robots」とYMO「TECHNOPOLIS」で使われているのは、おそらくヴォコーダーだろう。
今回、番組にトークボックス奏者として出演したJUVENILEは、現時点におけるプロのトークボックス奏者は「僕を含めて5人いるか、いないか」とコメントしたが、それは専門の演奏者のことを指しているはず。アクセントとしてトークボックスを導入するミュージシャンは昔も今も多い。スピーカーは1万5千円程度~で購入できるようで、意外に間口は広い機器だ。ただ、「多用すると頭部が共振してバカになる」「振動で歯が欠ける」という噂がかつて流布されたこともあり、そこだけは少し気になるが……。
最後に1つだけ。音楽ファンの間だと、トークボックスといえばZAPPだと相場は決まっている。ZAPPのロジャー・トラウトマンこそが、歴代No.1の代表選手。トークボックスを紹介するのなら、せめてその情報だけは外してほしくなかった。
コロチキ・ナダルも挑戦した、間口の広い楽器「カリンバ」
木の板に数本の金属が並ぶ楽器「カリンバ」も紹介された。コロコロチキチキペッパーズのナダルがYouTubeチャンネルで習得にチャレンジしていたのも記憶に新しい。
Amazonで調べると3,000円くらいで買えるようだ。雑貨店で売られていることも多い。つまり、身近に存在する楽器である。ただ、演奏法は難しそうだ。自分で音階を調整し、指で弾いて鳴らす“親指ピアノ”と言えば適当か?
カリンバが使用された楽曲として番組が紹介したのは、Galileo Galilei「青い栞」であった。イントロの高音部分で使われている。てっきりギターのハーモニクスかと思っていたが、実はあれはカリンバだった。ピンポイントで響く幻想的な音色は、確かにいいアクセントになっている。あと、映画『万引き家族』で一家が海へ行くシーンのBGMにも使われていた模様。同作のサウンドトラックを手掛けたのは細野晴臣である。
他に、高野寛「On and On」やボビー・コールドウェル「My Flame」でもカリンバは使われた。ナオトインティライミも愛用する楽器だ。今回紹介された中では、カリンバが最も手軽に始められる楽器だと思う。
『独眼竜政宗』メインテーマでも使用された楽器「オンド・マルトノ」
最後に紹介されたのは、オンド・マルトノ。この楽器だけは、名前を見たことも聞いたこともなかった。見た目からして大仰である。オルガンのような鍵盤の周りに家具のようなものが並ぶルックス。これらすべてでオンド・マルトノは構成される。いやはや、数百年前の織り機みたいに見えるというか何というか。
オンド・マルトノは電子楽器で、鍵盤から送った電子信号がスピーカー(家具のようなもの)に伝わって音が鳴るという構造だそう。印象としては、オルガンにテルミンが組み込まれたような……という表現で合っているか? 音色は不思議であり、不気味。ドリフのコントの幽霊が出るときにBGMで使えそうだし、一方で宇宙的な雰囲気もある。
演奏方法はかなり複雑で、はっきり言ってよくわからない。マスターするのは限りなく難しそうだし、楽譜も書きにくそうだ。そもそも、入手するのが困難である。開発者である電気技師のモーリス・マルトノはすでに他界し、オリジナルのオンド・マルトノは日本に約10台しかないとのこと。だから、購入する場合は所有者の言い値になってしまうのだ。なんか、絶滅危惧種の動物みたいで悲しいな……。
そんな貴重なオンド・マルトノが使用された楽曲は、いくつかある。まず、映画『ドラえもん のび太の宝島』挿入歌である、星野源の「ここにいないあなたへ」。あと、NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』のメインテーマでも使用されていたそうだ。これはまったく気が付かなかった。知らないでいると、普通の弦楽器みたいに聴こえるからだ。知らぬ間に、我々はオンド・マルトノに触れていたということ。
最後に、カリンバとオンド・マルトノによる異色のセッションが行われた。演奏曲は、関ジャニ∞の「キミトミタイセカイ」……って、もっと有名な曲で演ってほしかったのに! 正直、ファン以外には馴染みのない曲だろう。知らない曲を知らない楽器で演奏しているのを見ても、楽器の特色はわかりづらい。せっかくの貴重な機会なのに……。
兎にも角にも、『関ジャム』の楽器紹介回はやっぱりハズレなしだった。めずらしい楽器を素直に楽しむことができた。聴いたことはあっても実態が知られてない楽器は、世の中にまだたくさんある。あと、「プロ奏者たちはなぜこの楽器を手にしたのか?」という、そもそものきっかけも気になった。
そんな『関ジャム』らしい好企画の翌週となる今夜は、「2021年 年間ベスト10直前SP」が放送される。また、ランキングか……。この番組のランキング企画は味気ない内容になることが多いが、果たして。
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