楽天による独占禁止法違反問題が決着も…疑問と課題残る結果 新規出店の対応は?
#楽天
注目を集めていた楽天による独占禁止法違反問題が一応の決着を見た。しかし、その内容は重大な疑問と課題を残すものだった。12月6日、公正取引委員会ではウェブサイトで「楽天グループ株式会社に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」と題し、報道資料を発表している。
その内容を要約すると、以下のようなものだ。
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発端は2019年12月に楽天が「楽天市場」に出店している出店事業者に対し、「共通の送料込みライン」を 20年3月18日から一律に導入することを通知したことに始まった。
この「共通の送料込みライン」とは、原則として3980円(税込み)以上の注文には、「送料を無料」とすることを求めたものだった。この送料は出店事業者の負担となる。
これに対して、公正取引委員会(以下、公取委)は20年2月28日、東京地方裁判所に対し、独占禁止法第70条の4第1項の規定に基づき「共通の送料込みライン」を一律に導入することの一時停止を求め、緊急停止命令の申し立てを行った。
また楽天は「共通の送料込みライン」の導入に当たって、20年3月に営業担当者などが19年7月以前から楽天市場に出店している出店事業者に対して、「共通の送料込みライン」への参加を促し、さまざまな不参加店舗を不利にする扱いをほのめかすなどしていた。
例えば、楽天市場の検索結果で、今後、(1)参加店舗の取扱商品を優先して上位に表示し、不参加店舗の取扱商品は上位に表示されなくなる、(2)一度参加店舗の取扱商品に絞り込む検索を行ったユーザーの端末ではその状態をデフォルトの設定とする仕様に変更するため、不参加店舗の取扱商品はユーザーが自ら当該設定を解除しない限り表示されなくなるなどだ。
さらに、「共通の送料込みライン」に参加しなければ、次回の契約更新時に退店となることや、大型キャンペーンに参加するためには「共通の送料込みライン」への参加が必要であると伝える、または示唆する営業活動の事例もあった。
この結果、意に反するとしても「共通の送料込みライン」に参加した店舗では、自己負担となる送料分を商品価格に上乗せする値上げを行うことは可能ではあったが、値上げによって客離れが生じる、あるいは、上乗せ値上げを行わない競合店があるなどして、現実的に値上げには踏み切れず、収入が減少するなどの不利益が生じた。
また、「共通の送料込みライン」に参加したため、従来よりも送料が無料になる購入額が下がったことで、まとめ買いする金額が低がり客単価が低下、あるいは、ユーザーが3980円を少し超えるよう調整してまとめ買いをするため、送料負担が増加した店舗もあった。
さらに、楽天は21年5月10日以降、(1)楽天市場への出店プランの変更申請を行うには「共通の送料込みライン」への参加が必須となる、(2)いったん出店プランを変更した後は適用対象外申請を受け付けない旨を告知し、出店プランを変更するには「共通の送料込みライン」への参加が必須条件としていた。
公取委の「共通の送料込みライン」緊急停止命令の申し立てに対して、楽天は20年3月6日、店舗の選択により「共通の送料込みライン」の適用対象外にできる措置を行うことなどを公表、その後、出店事業者が適用対象外申請を行うための手続きを設けた。
これに対して、公取委は「出店事業者が共通の送料込みラインに参加するか否かを自らの判断で選択できるようになるのであれば、当面は、一時停止を求める緊急性が薄れるもの」と判断、20年3月10日に緊急停止命令の申し立てを取り下げた。
ただし,出店事業者の選択の任意性が確保されるか否かを見極める必要があると判断して、継続して審査を行っていた。
公取委では、「楽天が自己の取引上の地位が優越している出店事業者に対し、「共通の送料込みライン」への参加を促す際に不参加店舗を不利にする取扱いを示唆するなどして、参加すること及び適用対象外申請を行わないことを“余儀なくさせる”ことにより、出店事業者に不利益が生じる場合には、“独占禁止法違反となり得る”」との問題意識を持っていた。
これを楽天に伝えたところ、楽天からは21年7月1日以降、出店プランの変更時に「共通の送料込みライン」への参加を必須とする運用を取りやめるなど改善措置の申し出があった。公取委では、その内容を検討し、今後、楽天が改善措置を実施したことを確認した上で審査を終了することとした。
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