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蛙亭・イワクラ「マジ来年優勝する」あと大鶴肥満の絶妙さ加減

蛙亭・イワクラ「日常に潜んでる気持ち悪いこととかを、コントで出して表現したい」

 話題の女性の人生を映し出すドキュメントバラエティ『セブンルール』(フジテレビ系)。ちょっとオシャレな雰囲気の『情熱大陸』(TBS系)という感じの番組だが、その7日の放送で密着されていたのは、お笑いコンビ・蛙亭のイワクラだった。

 蛙亭は今年、『キングオブコント』(TBS系)の決勝に初めて進出した。結果は6位。しかし、そのコントはトップバッターながら大きな笑いを生んだ。会場の笑いの沸点を引き下げ、2番手以降の芸人の点数を引き上げたという意味で、蛙亭のコントなくして今年の『キングオブコント』の盛り上がりはなかったかもしれない。そんな蛙亭のネタ作り担当、イワクラの舞台での仕事やプライベートをカメラは追った。

 蛙亭のコントは独特だ。しばしば、猟奇的とも不条理とも形容される。ネタ作りを担当するイワクラは言う。

「日常の喜怒哀楽のもっと隙間みたいな。そういう日常に潜んでる気持ち悪いこととかを、コントで出して表現したいなって」

 で、そんな蛙亭のネタ作りというかネタ合わせの一部がカメラに収められていたのだけれど、これもまた独特だ。蛙亭はネタ合わせらしいネタ合わせをしない。この日、ライブで新作コントを披露することになったイワクラのスマホには、「新ネタ/リモート会議してる/後ろを子供の中野が通る」とだけメモが。これだけ。しかも、出番直前になるまで相方の中野周平には新ネタの内容を伝えていない。

 彼女は劇場の関係者用通路のようなところで、直前に中野に新ネタの内容を伝える。

「喫茶店でリモート会議してる人の後ろにめっちゃ写り込んできて。『あ、すいません、今ちょっとリモート会議してて』って。『前ここで会社辞めたいってつぶやいてコーヒー飲んでたじゃん』って。頭ポンポンしてハケて、みたいな」

 実際にはもう少しいろいろ伝えているのかもしれない。編集の都合上、一部だけが放送されているのかもしれない。それだとしても情報量は少ないし、実際に動いて演じてみるわけでもない。設定や大まかな流れ、オチを口頭で伝えただけ。だが、中野はこれを聞いて「うん」とひと言だけ。イワクラの「いける?」との問いかけに、中野は「いけた」と応じた。

 で、実際に舞台上で披露されたコントも放送されていたのだけれど、中身はぶっつけ本番、ほぼアドリブ。それで、劇場の笑いを見事にかっさらっていく。2人はこんなふうに新ネタをおろし、面白い部分だけを次に残していくらしい。蛙亭のこういったコントの作り方、トーク番組などで当人たちから語られてはいたけれど、実際に映像で見ると両者のアドリブ力にちょっと驚く。

 あと、イワクラといえば、芸人たちとのルームシェアでも知られる。一緒に暮らしているのは、伊藤俊介(オズワルド)、森本サイダー、大鶴肥満(ママタルト)だ。『セブンルール』でも当然、この共同生活の一部が放送された。『キングオブコント』決勝から帰ってきたイワクラを家で迎える面々。大鶴肥満(彼はいつでもフルネームで言いたくなる)の焼いたピザを頬張りながら、イワクラは「マジ来年優勝する」と決意を新たにした。

 というか、番組は明らかに大鶴肥満に必要以上のフォーカスを当てていて(聞き取りにくいけど「まーごめ」のひと言も滑り込みのような形で放送)、このルームシェアを楽しく視聴する方法を知る者が、『セブンルール』のスタッフの中にいることは確実だ。大鶴肥満を知らない人も、大鶴肥満を愛でたい人も両方満足するような、説明過剰にも説明過小にもならない情報だけを残すギリギリのライン。素晴らしい仕事だったと思う。

「お腹が減ってるときに助けていただいた方が、すごい頭に残ってるというか。恩返ししたい人たちのために、優勝したいですね」

 密着VTRの最後、イワクラはカメラにそう語った。彼女のコントへの熱さ、そして、番組で一瞬映った、眠る大鶴肥満の『セブンルール』史上おそらく最も黄色い枕が印象に残った。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2021/12/15 11:00
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