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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 日大・田中前理事長復帰の“シナリオ”

日大・田中前理事長復帰の“シナリオ”と文科省「日大再建」の本気度

尿だけで「精度86%のがん検査」疑惑とカラクリ

 さて、今週の第1位は、文春の「線虫がん検査」に疑義ありというスクープに捧げたい。

 線虫というのが、がん患者の尿の匂いを好み、その匂いの方向へ向かうという話は、だいぶ前から話題になっていた。

 そんなものがあるのかと思う程度だったが、何やら胡散くさい感じがしていた。

 その実態を暴いた、文春お得意の見事なスクープである。

 11月16日、ベンチャー企業のHIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮代表は記者会見で、

「早期膵がんが特定できる時代がすぐそこに!」と宣言した。

 ここは2016年に設立された。広津代表によれば、線虫はがん患者の尿の匂いを好み、そっちへ向かうが、健常者の尿の匂いは嫌うため、線虫の動く方向でがんのリスクが判定できるというのだ。

 だが私などは、がん患者といっても、いろいろながんがあるが、どうやって、これは肺がん、これは胃がんと分かるのだろうかと、疑問に思うのだが。

 そんなことはたいしたことではないのか、検査キット「N-NOSE」まで売り出した。

 これを使えば、胃がん、大腸がんなどの五大がんに加え、肝がん、前立腺がんなど、全15種類のがんが判定できるという。
 
「『N‐NOSE』の値段は1回1万2500円。4~6週間で結果が分かる。検査の精度も高く、HPには『がんに対する高い感度86.3%が報告されている』とあり、H社のHPにはがん患者の尿を置いたシャーレでは数十匹の線虫が尿の周りに集まり、健常者の尿を置いたシャーレでは、線虫が反対側に数十匹集まっている写真が掲載されている」(文春オンライン12/08より)

 感度が86%以上あるということは、かなりの確率でがんかどうかが判定できると思ってしまうだろう。

 注目度は高く、福岡県と久留米市もここへ助成金を出している。

 だが、
「『こんなにはっきりと分かれるのを見たことがない』と元社員は断言する。
『線虫は温度、湿度など様々な要因の影響を受けるため、尿の匂いだけに反応して動くのか分かりません。実際、検査する線虫の数が50匹の場合、左右に分かれる数の差は10匹以下がほとんど。わずかな差で、陽性・陰性を判定している』
広津代表の判断で結果が陽性にも陰性にも変わることもある。別の元社員が言う。
『代表は検査員や研究員の検査を「上手い」「下手」と表現します。正解率が高いデータは「上手い」と採用し、都合の悪いデータは「下手だ」と破棄していた。「上手い」検査員しか再現できないなら実用化するのは危険だと、実用化直前に訴えた社員もいましたが、聞き入れられませんでした」(同)

 当然だが、線虫検査を受けてがんではないと判定された患者が、たまたま同じ時期に受けた健康診断でがんと判明したケースも出てくる。

 文春にはこんなことも書いてある。

 結果が分からない状態で検査した。3人の検査員が行った4回の検査結果の平均値は、がんと判定できたのは18回、感度90%。

 だが、健常者の尿を28回検査して健康と判定できたのは3回しかなかったという。

 つまり、この検査ではがん患者でも健常者でも、とにかく陽性だと判断しているに過ぎないようだ。 

「代表の広津氏を直撃した。
――実際は公表している数値に達していないのでは?
『私は実用化したものが感度86%だなんて言っていませんよ! 臨床研究のデータではこの結果が出ていると言っているだけです。CMにもそう書いています』
――商品化されたものは精度86%ではない?
『臨床研究だとこういうことが出てると言っているだけ。それを誇大広告だとしたら、全部誇大広告ですよ』
確かにHPでは“実用化した商品”が86%とは明記していないが、『精度86%のがん検査』を謳えば、普通はどう捉えるだろうか。
OMM法律事務所の大塚和成弁護士はこう指摘する。
『優良誤認、いわゆる誇大広告に当たり得る。CMで小さく〈がん患者を「がん」と判定する確率〉と記載していますが、精度86%の言葉が先行し、視聴者にとって正しい理解ができない』
改めてH社に取材を申し込むと広津代表は、実用化された商品も『臨床研究と同等の精度であることを確認して実用化しております』と明言した。実用化された商品の『精度』はいかなるものなのか。がんは人の生死にかかわるだけに、H社が今後、どう説明するのか注目される」(同)

 文春らしくなく、おかしいとはいい切っていないが、私のような素人が読むと、こんな検査を受けようなどとは全く思わない。(文中敬称略)

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