警察庁、酒気帯び運転防止策を強化 痛ましい事故は減らず
#交通事故
2022年10月から、一定の台数以上の社用車を使用して業務を営んでいる事業者に対して、アルコール検知器による酒気帯びの確認が義務化される。酒気帯び運転による交通事故の撲滅を目指したものだが、問題も残されている。
21年6月に千葉県八街市の小学校通学路で、下校中だった小学生の列にトラックが突っ込み、2人が死亡し3人が負傷する事故が発生した。運転手の男の呼気からは基準値を超えるアルコールが検出され、飲酒運転であることが判明。また、事故当時はアルコールの影響により居眠り状態だった。
この痛ましい事故を受け、警察庁は「道路交通法施行規則」の改正により、酒気帯び運転の防止策に乗り出した。それが、これまで事業用の「緑ナンバー」に対して義務化されていた酒気帯び確認を、自家用の「白ナンバー」に拡大することだった。
対象となるのは、道路交通法で安全運転管理者の選任が義務付けられている事業所で、具体的には「乗車定員11人以上の自家用自動車」を業務で使用している事業所、または、自動車を5台以上業務で使用している事業所。
酒気帯びのチェックは2段階で実施される。まずは、22年4月1日から安全運転管理者による酒気帯びの“目視”による確認と、確認内容の記録と保存が開始され、10月1日からはアルコール検知器を用いた確認が必要となる。
現状でも安全運転管理者には安全運転を実施するために、以下の業務が義務付けられている。
①運転者の状況把握
②全運転確保のための運行計画の作成
③距離、夜間運転時の交替要員の配置
④異常気象時の安全確保の措置
⑤点呼等による安全運転の指示
⑥運転日誌の記録
⑦運転者に対する指導
この中で⑤の点呼等による安全運転の指示の際には、運転者の体調や飲酒、酒気帯びの状況などを確認し、安全運転のために必要な指示を与えることになっている。
つまり、現状でも安全運転管理者による酒気帯びの“目視”による確認は実施されているはずだが、それが確実に実施されていないことから、改めて実施を求めたものとなっている。
従って、22年4月の道路交通法施行規則の改正では、「運転しようとする運転者および運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について当該運転者の状態を“目視”等で確認すること」、さらに、「確認の内容を記録し、およびその記録を1年間保存すること」が明記される。
さらに、10月の改正では、「運転しようとする運転者および運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について当該運転者の状態を目視等で確認するほか、“アルコール検知器”を用いて確認を行うこと」、さらに、「確認の内容を記録し、およびその記録を1年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること」が明記される。
問題は、運転者の顔色や呼気で酒気帯びを“目視”でどこまで確認することができるのかという点だ。飲酒をしても顔色が変わらない人もいれば、呼気は口臭剤などで消すこともできるだろう。
結局はアルコール検知器に頼らざるを得なくなる。ただし、酒気帯びの確認は対面で行うことが原則とされており、乗車前であればアルコール検知器も有効だろうが、仕事中の飲酒に対して検知器を使用することは難しいだろう。
さらに帰社した際には対面で、酒気帯びの確認を行うことは可能だろうが、直帰をした場合にはどう対応するのか。
この疑問に対しては、運転者に携帯用のアルコール検知器を持たせるなどをした上で、カメラやモニターを通じての確認、あるいは、携帯電話、業務無線などでの直接対話と検知器による測定結果の報告などでも可能としている。
しかし、果たしてこの方法で酒気帯びの確認が十分にできるのだろうか。もちろん、アルコール検知器を導入し、酒気帯び運転の防止に最善を尽くすことに越したことはない。だが、結局は酒気帯び運転は運転者の意識に大きく左右される。必要以上の運転者教育と罰則の厳格化が必要ではないだろうか。
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