「おもろいことを言う人の声やねん」麒麟川島、笑い飯西田の“声”と笑いの考察
#テレビ日記
川島明「『ピン子』と『えなり』」
声といえば、今回の優勝者である川島明(麒麟)への言及は避けられない。彼はこれまでもその低音ボイスを存分に活かしてきた。漫才のつかみに使ってきただけでなく、相方の田村裕の動きに川島がナレーションをつけていくという彼らが得意としてきた漫才のスタイルも、川島の声質があってこそのものだったかもしれない。そしていまでは、『ラヴィット!』(TBS系)で平日の朝の顔を務め、その声で出演者たちの“大喜利”をさばいている。そんな彼に『IPPONグランプリ』がつけた異名は「朝の大喜利支配人」である。
今回の『IPPONグランプリ』でも、川島は1本を量産。特に「タレント犬に『プロフェッショナルとは?』 その答えは?」のお題で、5つの回答、3つの1本。川島は単独トップに立ち、Bブロックからの決勝進出を決めた。彼の声質が、インタビューに答える状況のお題とマッチしていたのかもしれない(『座王』で笑い飯・西田がジュニアに「声もええのよなぁ」と評されたのも、『プロフェッショナル』のお題だった)。もちろん、声だけでなく、発想もすごいのだけれど。
そして決勝戦で堀内健と戦った川島がまた圧巻。「カッパが自分のサインの横に必ず添える一言を教えて下さい」とのお題に、川島は「心はひとつ…皿一枚…」との回答をしっとりと読み上げ、ホリケンに回答する余地を与えず1本先取した。そして2対2までもつれ込んで迎えた5問目。お題は「3文字の一番強いものと弱いものを教えて下さい」。モニターにお題が映る。ナレーションが「3文字の…」と読み上げ始める。川島はそのナレーションを待つまでもなく、目を机に落としてフリップにペンを走らせる。その速度、驚異。出てきた回答が、さらに驚異。
「『ピン子』と『えなり』」
瞬時につく採点ランプ。会場を包む笑いと拍手。松本が「マジか川島、やべぇなこいつ」と声を漏らす。川島は5年ぶり、2度目の優勝を果たした。声に関していうと、このとき川島は低音というよりも、少しファニーな声質を使っていた。「ピン子」と「えなり」という改めて見ると奇妙な芸名、ピン子のPの音、文字で見たときの「えなり」の平仮名の丸みを帯びた曲線、ゴシップネタであること――。後から振り返ってみると、さまざまな条件をふまえたときに一番面白く聞こえる声質だったように思う。
優勝トロフィーを手渡す松本が「最後すごかったね。瞬速であれ、すごくないですか?」とコメントすると、「降りてきました」と答える川島。しかし、聞き取りづらかったのか、松本が「え?」と聞き返す。低音ボイスをベースにさまざまな声色を活かしてお題に答えてきた川島。彼は最後に、こう絞り出すように答えた。
「もう声が出ません…」
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