岸田政権の対策は失敗? オミクロン株出現で高騰していた原油価格がやっと急落
#ガソリン
南アフリカで確認された新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が、原油価格の高騰を一変させてしまった。岸田首相が胸を張って打ち出した原油高対策も、新型コロナには勝てなかった。
11月24日に南アフリカで初めて確認された新型コロナの変異株オミクロン株を、26日にWHO(世界保健機関)が警戒レベルの最も高い「懸念される変異株」に指定したことで、世界中が一気に警戒態勢に突入した。
オミクロン株の確認によって世界中の株価が暴落し、世界各国で緩和に向かっていた新型コロナによる入国制限が再び、強化される事態に陥った。日本も岸田首相が30日から入国制限の強化を実施した。
こうしたオミクロン株が大きな災厄をもたらす中で、唯一の朗報は「オミクロン株の出現による入国制限の強化などにより、世界の経済活動に打撃を与えるとの見方が強まったことで、“原油価格が大きく下落”した」ことだろう。
筆者は10月26日の「ガソリンの高騰に歯止めかけるか… 課税停止で価格調整する『トリガー条項』発動は?」で、レギュラーガソリンの1リットル当たりの小売価格が、3カ月連続で160円を超えた場合、翌月からガソリン税の揮発油税の特例税率となっている上乗せ税率分の25.1円の課税を停止する“トリガー条項”があるが、この条項が事実上廃止となっており、“抜かずの宝刀”であることを取り上げた。
https://www.cyzo.com/2021/10/post_294600.html
その後、岸田首相は原油価格の高騰対策として、21年度補正予算に石油元売り業者に補助金を出す施策を盛り込んだ。
これは、ガソリンの全国平均小売価格が1リットルあたり170円を超えた場合、最大で5円分を補助するもの。例えば、1リットルあたり173円となった場合には3円を補助する。補助金は22年3月末までの時限措置で、対象はガソリン、軽油、灯油、重油の石油関連4油種となっている。
ただ、この制度は何故ガソリンの小売価格1リットルあたり170円を基準価格としたのかの理由が明確ではなく、石油元売り業者への補助金でどれだけ小売価格が抑えられるかもわからないため、ほとんど評価されなかった。
11月23日、バイデン米大統領は「日本や中国、インド、韓国、英国と協調して石油の国家備蓄を放出する」と発表した。これに呼応して、岸田首相も24日に、石油の国家備蓄放出を発表した。
だが、この国際協調による石油の国家備蓄放出も、原油価格の動向に大きな影響を与えることはなかった。
原油価格(WTI原油先物価格)の直近の動きを見ると、23日も、24日も価格は高止まりしており、1バレルあたり70ドル台後半を維持している。
だが、WHOがオミクロン株を警戒レベルの最も高い「懸念される変異株」に指定した26日、1バレルあたり68ドル台前半に急落している。11月の高値は10日の1バレルあたり84.97ドル、安値は30日の同67.09ドルだから、1バレルあたり15ドル以上も下落したことになる。
ただ、原油価格の先行きはまだまだ不透明だ。オミクロン株によって世界の経済活動がどの程度影響を受け、石油需要が減少するのかが不透明な上、オミクロン株による経済活動の停滞を理由に、産油国が頑なに原油の増産を拒否する可能性がある。
原油価格は、20年10月には1バレルあたり35ドル台だったが、世界の生産活動が再開されると、需要の強さを背景に価格上昇が続き、21年10月には同83ドル台に上昇し、1年で同50ドル近い上昇となった。
オミクロン株が世界の経済活動、生産活動にどの程度の影響を与えるのかは定かではないが、原油価格が一段と下落しなければ、オミクロン株に対する懸念が薄れれば、原油は一段高となり、1バレルあたり90ドル台へと上昇する可能性もある。
原油高はまだまだ予断を許さない状況に変わりはない。
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