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【国立がん研発表】2020年のがん登録数は前年度比で減少も、検診延期など影響?

【国立がん研発表】2020年のがん登録数は前年度比で減少も、検診延期など影響?の画像1

 新型コロナウイルスの感染拡大による病院への受診抑制が、がんの発見・治療を減少させた可能性がある。国立がん研究センターによると、2020年のがん登録数は前年度比で6万409件(4.6%)減少した。

 同センターは11月26日、がん診療連携拠点病院等を含む863施設の104万379例のがんデータを用いて、集計をまとめた。それによると、前年度と比較すると小児がん拠点病院1施設を含む594施設で全登録数が6万409件減少(4.6%減)した。

 がん診療連携拠点病院等における5大がん(男性:胃、大腸、肝臓、肺、前立腺、女性:胃、大腸、肝臓、肺、乳房)の登録数は、前年比2万7653件(6.2%)減少し、41万9919件だった。

 登録数はここ10年間で初めて減少に転じており、新型コロナによる受診抑制の影響が明確に現れている。(表1)

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 がんの種類別登録数で見ると、男性では、胃がんが前年比6018件(11.3%)減、大腸がんが同4381件(6.8%)減、肺がんが同2033件(3.3%)減、肝臓がんが同560件(3.2%)減、前立腺がんが同3908件(6.1%)減とすべてのがん登録数が減少しており、全体では1万6900件(6.5%)減少した。(表2)

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 女性でも、胃がんが前年比2900件(12.5%)減、大腸がんが同2443件(5.5%)減、肺がんが同1577件(5.2%)減、肝臓がんが同342件(5.0%)減、乳房がんが同3491件(4.2%)減とすべてのがん登録数が減少しており、全体では1万753件(5.7%)減少した。(表3)

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 男女ともに肝臓の登録数は前年より小幅の減少にとどまっているのに対して、特に男性で胃・大腸、女性で乳房・胃の登録数が大きく減少した。

 がんの発見経緯では、がん検診等の発見例は1万4152例で、過去4年平均と比較すると4538件(24.3%)減少した。いずれも緊急事態宣言が発出されていた5月の減少が大きかったが、その後回復傾向にあった。

 月別では、5~6 月にがん検診発見例、検診以外の発見例ともに減少した。20 年4月に市区町村におけるがん検診が延期となった事等の影響、また、がん検診以外の発見例の登録数も減少していることから、受診控えも一定数生じた可能性が考えられる。

 20 年全がんの初回治療開始例の登録数は、76万5201件で、20年の増減は過去4年と比較して1万4853件(1.9%)減少、前年と比較して4万7260件(5.8%)も減少した。

 診断月ごとの登録数では、新型コロナ流行に伴い緊急事態宣言が発出されていた5月に登録数が減少し、その後回復傾向にあるものの、新型コロナ感染者数が増加した8月に再び減少した。

 都道府県別の5大がんの登録割合を見ると、全体では前年比0.7%減少の48.9%となっているが、濃淡が見られる。もっとも登録数割合が少なかったのは、宮崎県の39.8%、次いで山梨県の43.4%、長野県46.5%、香川県46.8%、鹿児島県47.2%だった。

 一方、登録割合が多かったのは、青森県の53.3%、福井県52.4%、石川県51.6%、愛媛県51.2%、福島県51.0%だった。

 これらのデータを見ると、新型コロナの感染拡大により、健康診断やがん検診の受診抑制があったことは明らかだろう。

 がんは早期発見・早期治療によって回復する可能性が飛躍的に高まる。半面、発見・治療が遅れれば、根治が難しい病だ。新型コロナ感染拡大の状況にあっても、躊躇することなく、健康診断やがん検診を行う必要がありそうだ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2021/12/05 06:00
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