『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』とソニー・ピクチャーズが実現させた“20年越し”の夢
#映画 #ヴェノム
ヴェノムVSカーネイジ 実現に約20年かかった……夢の対決!!
ヴェノムVSカーネイジは、原作コミックを読んだことがあれば誰もが思い浮かべる対決だろう。互いになくてはならない存在ではあるが、実写化への道は決して平たんなものではなかった。
ソニー・ピクチャーズとしては、ヴェノムVSカーネイジは約20年前から実現させたかった企画であるといえるだろう。実は、ヴェノムことエディ・ブロックは、『スパイダーマン』(2002)から登場させる計画があった。カットされてしまった映像の中にエディが登場していたり、セリフの中でエディの存在を匂わされていたりしたのだ。ソニーが、ヴェノムを登場させたくてうずうずしていたことが見て取れる。
しかし、監督のサム・ライミがなかなか許可を出さなかった。サムはスパイダーマンの大ファンであり、原作者スタン・リーとは友人関係でもあった。実現には至らなかったが、「マイティ・ソー」を映画化する企画も進めており、2人は頻繁に会っていたという。ただし、サムはあくまでクラシックなスパイダーマンのファンであって、身近な存在がヴィランになってしまうことにこだわっていた。
ところが、1988年に初登場したヴェノムは宇宙生命体であり、アメコミ『スポーン』作者のトッド・マクファーレンによる奇抜なデザインも含めて、これまでの「スパイダーマン」シリーズとは異質な存在だった。サムはスパイダーマンシリーズにヴェノムは合わないと考えていたため、ソニーのヴェノム登場案はことごとく跳ね除けてきたのだ。ヴェノムをドウェイン・ジョンソン、カーネイジをヴィン・ディーゼルが演じるという情報もメディアに流れたが、これも実現しなかった。
結果として、サムが折れるかたちで『スパイダーマン3』(2007)にヴェノムが登場。ソニーもこの頃にはヴェノムのスピンオフ企画を発表し、実際に『ゾンビランド』(2009)のポール・ワーニックとレット・リースに脚本を依頼するところまで話が進んでいた。
ただ『スパイダーマン3』は、ヴェノムの登場によってサイドマンとニューゴブリンも加えてヴィランが3体になったことで、ストーリーが散らかってしまい、シリーズの中では失敗作という印象がついてしまった。続く『スパイダーマン4』もサムが監督を続ける予定で企画途中だったが、ソニー側と意見が食い違い、サムは離脱。結局、『アメイジング・スパイダーマン』(2012)としてリブートされることになってしまう。
『スパイダーマン3』に登場したヴェノムの印象が残っている間であれば、スムーズにヴェノムとカーネイジの対決を実現できたのだが、完全にタイミングを見失ってしまったのだ。
企画が保留になっている間に前作の印象は薄れ、ヴェノムをその誕生エピソードからもう一度描かなくてはならなくなってしまった。2018年にやっと実現した『ヴェノム』ではそのために尺が足りず、カーネイジはチラ見せに終わった。
ただし、『ヴェノム』でキャラクターを再構築したことは、作品全体を通して見ると良い面もあった。原作ではスパイダーマンありきの設定だったのが、その不在によって、スパイダーマンのコミカルな要素をエディとヴェノムの関係性に組み込むことに。それが奏功し、映画独自のヴェノム像を作り出すことに成功したのだ。
かなり長い期間を経て実現に至ったヴェノムとカーネイジの対決。こうした背景を知った上で『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を観ると、より特別感が増すはずだ。
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