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片寄涼太『ラウンドトリップ 往復書簡』(新潮社)刊行記念インタビュー

片寄涼太純度100%! どこにも忖度なしに言葉を編み上げた「往復書簡」

かけなくて絞り出した先にあった意外な発見

[入稿済]片寄涼太純度100%! どこにも忖度なしに言葉を編み上げた「往復書簡」の画像5

ーー『ラウンドトリップ』の執筆についても聞かせてください。自分で文章を書いてみてどうでしたか?

片寄 ブログを書くくらいしか執筆ということをしてこなかったので、実質初挑戦です。最初は言葉が出てくるのにも時間がかかりました。でも最終的に本になる段階で、「まえがき」を書いたときはあっという間に書けるようになっていて。難しさも楽しさも感じられる貴重な経験でした。

――まえがきで「最初の頃の文章はなんかぎこちなくて、ちょっと固い印象で、いま読むのは少し恥ずかしい」と書かれていましたね。

片寄 読み返すと、最初のほうはいろんな部分でためらいがあったなと思います。気恥ずかしさもあったりして。でも書いていくうちにその気恥ずかしさがクセになっていきました。往復書簡の相手が信頼する小竹さんだったからこそ、やりとりの中で見えてくる自分自身があったんだと思います。さらけ出していく感覚があるというか。

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――書きながら悩んだ部分はありましたか?

片寄 単純に慣れていないので言葉が重複したり「これでちゃんと伝わってるのかな?」と思ったり、表現に悩まされましたね。

――書けないときは諦めていったん書くのをやめていたそうですね。

片寄 やめてました。文字数がわかるアプリで書いてたんですけど、1200字書かないといけないところを「まだ800文字か!」みたいになったりして。最初の頃は、膨らませるのは作業として苦労しました。でも書いていく中で、自分自身から出てくる言葉だったり喩えだったりに、自分で驚くこともあって。

――それは具体的にはどんな表現ですか?

片寄 この連載のことを「ちょっとした未来へのタイムカプセル」と表現している箇所があるんですけど、これを書いたときは自分で「そういう言葉が出てくるんだ」ってちょっと驚きました。そういうふうに覚えた表現の感覚から、歌詞だったり曲にできたらいいなと思ったりしましたね。

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――ネタで苦労した部分もありましたか?

片寄 コロナ禍の初期に始まった連載だったのでネタが少ない時期ではあって、「奇跡よ、起きろ」みたいに待っていたときもありました。そうやって待ってる感覚から生まれる何かを受け取るとか、発想の転換は必要でしたね。目の向け方によって、身の回りでもたくさん面白いことが起きてるんだと思えました。

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――タクシーのエピソードが何個かありますよね。運転手さんから区役所に行くんだと思われて、雰囲気を壊したくなくて話を合わせたせいで降りる場所を本来の目的地からちょっとずらしたというエピソードが、私は特に好きでした。

片寄 あー! 本当に、あれを表せる言葉ってないんですかね? あの現象をなんというのか、言葉が欲しい……。

――心理学用語で何かしらありそうですね。そのエピソードに続けて、「空気を読んでしまうところがあって、それがいいのか悪いのか迷ってしまう。ずっと悩んできたことだし、後悔はないですが」というようなことを書かれていたのも良いなぁと。

片寄 どっちやねんって感じですよね(笑)。

――そうやってぐるぐるするところが片寄さんらしいのかな、と1冊通して読んで思いました。

片寄 うーん、たしかに、なんか反芻して悩んでますよね。この本は、そうした葛藤みたいなものも赤裸々に感じとってもらいやすいものになったのかなと思います。僕自身も、そういうところを隠したいわけではないですし。むしろ、なんだろうな、テレビに出てライブでド派手な衣装を着てステージに立ってパフォーマンスしている人も“人”なんだな、って感じてもらえたらすごくうれしいなって思ってます。

 

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――たしかにそこはすごく感じました。別のエピソードで、大通りでタクシーを待っていたら後から来た人に割り込み乗車された話がありましたが、「東京ドームで見たアーティストでもそういうことはあるんだなぁ」と。

片寄 そうなんですよ、「俺、東京ドーム立ってるのにタクシーとられるんかい! ちょいちょいちょい!」っていう。

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