男性版モナ・リザが13万円から510億円?映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』
#ドキュメンタリー映画
「いかがわしい闇の王国」とまで呼ばれる理由
本作では絵の真作か贋作かの審議の他に、「美術界のからくり」や「莫大な⾦銭の取引」も生々しく描かれている。厳重な警備体制の中で暮らしている大金持ち、⼿数料を騙し取ろうとする仲介者、国際政治での暗躍が噂されるある国の王子など、真っ当な権力者だけでなく、「魑魅魍魎」とも言っていい不届き者たちも、この絵をめぐるバトルに参加するのである。
絵画が芸術品としての評価うんぬんよりも、もはや「投資商品」になっていることも綴られおり、中には「よくもまあ、こんなギリギリで表向きは合法な金儲け(節税)の手段を見つけるものだ」と、皮肉混じりで感心してしまうシーンもあった。
本作の面白さは、これらの動向がおかしみにもつながっている、ある種のブラックコメディにも見えることにもあるのではないか。何しろ、劇中の「男性版モナ・リザ」は前述した通り「人によってダ・ヴィンチの真作か贋作かの意見もバラバラ」「絶対的に価値のあるものだと断定されていない」のだから。
その絵に対して莫大な金額をオークションで提示する様も、良い意味で「遠い世界の話」のように思えてくる。これほどリスキーなギャンブルも、そうそうないだろう。一瞬だけの登場ではあるが、誰もが知るハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオが、とある「利用」をされているシーンも苦笑してしまった。
劇中では、ジャーナリストが「美術界は秘密だらけで不透明で規制がない。いかがわしい闇の王国だよ」と表現する一幕もある。まさにその通りで、黒い欲望にまみれた者たちが大きな賭けに出たり、ギリギリ合法の手段で大儲けを企んだり、真偽が不明の噂がさらなる噂を呼ぶ様は様は、闇の王国と呼ぶにふさわしい。
とは言え、本作が絵画の世界を糾弾したり告発する意図で作られてるわけではないだろう。あくまで「先の読めないスリリングな事実が波状的に提示される、欲望まみれのミステリー・ノンフィクションムービー」という娯楽作として、中立的かつ客観的な視点で観られることが長所。美術界に携わる方にとっても、おそらくはこの後の「指針」にもなる内容ではないか。ぜひ、赤裸々に暴かれる絵画の世界の面白さを、劇場で堪能してほしい。
『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』
11/26(金) TOHO シネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
監督:アントワーヌ・ヴィトキーヌ
原題:The Savior For Sale/100 分/フランス映画/カラー/ヴィスタ/5.1ch デジタル/ 字幕翻訳:松岡葉⼦
C)2021 Zadig ProductionsC)Zadig Productions – FTV
公式サイト:gaga.ne.jp/last-davinci/
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