ベトナムと日本をつなぐ「あんかけ揚げめんフォー」のワンダーランド
#かた焼きそば
初めて食べたのに懐かしい
一見、洒落た創作料理に出てきそうな現代風(?)かた焼きそばのようだが、果たしてその真価は──。
具材は豚バラ、タマネギ、エビ、トマト、チンゲンサイ、水菜、ニンジン、そしてお馴染みのパクチー。緑野菜が多く使われていて鮮やか、かつヘルシーな取り合わせがベトナム料理らしく、カロリーが気になる方も安心して食べられそうだ。
あんかけはオイスターベースで、一般的なかた焼きそばと比べてスープっぽい。タイのかた焼きそばもそうだったが、東南アジアの人々にはこのくらい緩いあんかけが好まれるのだろう。
そして、本丸の揚げフォー。
中太平麺がカラリと揚がって、とても香ばしそうなビジュアル。若干、中華麺に比べて箸でほぐすのが困難だが、そこはレンゲという相棒ががっちりサポート。無理なく食べ進めることができるので、安心だ。
原材料が違うので、揚げた中華麺よりも明らかに強いスナック感。これはこれで面白い食感だし、十分に料理として成立している。具材とも相性が良い。
ただ、初めて食べたはずなのに、既視感、いや、既食感がある。
言われてハッと気づいたのだが、小麦が原材料の中華麺に対して、フォーの原材料は米。米を揚げたものといえば……そう、せんべいだ。
思わぬところでベトナムと日本がつながった。
そして、あんかけに浸された揚げフォーは、いつしか濡れせんべいのようになり、また違った表情を見せる。不思議と懐旧の念にかられるのは、やはり米が主食の日本人だからか。 ストンと腑に落ちた気持ち良さと、料理としての美味しさ&面白さが合わさって、早々に完食。
中華麺を揚げる。
これまで常識だと思われていたかた焼きそばの定義を覆す、あんかけ揚げめんフォー。当たり前を疑い、フラットに物事をとらえたことから新しいものが生まれるお手本のような一品だ。
先述の通り、10月~5月末までの季節限定メニューなので、この記事を読んで気になった方は是非行ってみてほしい。また違ったかた焼きそばの景色が見られるだろう。
<INFO>
・亞細亞食堂サイゴン 上町店
住所:東京都世田谷区世田谷3-3-5
営業時間:[土・日・祝日]11:00~15:00(L.O.14:30)、17:00~20:00(L.O.19:30)
[月~金]11:30~15:30(L.O.14:45)、17:00~20:00(L.O.19:30)
定休日:月曜
Facebook:@saigonkamimachi
Twitter:@KamimachiSaigon
Instagram:@saigonkamimachi
<連載「かた焼きそばのフィロソフィー」の過去回>
第1回:「海老天ベンツも潜む圧倒的な情報量の“揚げ日本そば”スタイル」
第2回:「中野坂上にも“夢と魔法の王国”があった! 豚レバーとピリ辛餡が刺激的な『ミッキー』のかた焼きそば」
第3回:「椎茸・ザ ・ボンバーの一点突破! “映え”だけじゃない極端かた焼きそばの滋味と享楽」
第4回:「インド、アメリカ、中国が同盟を結んだ! フォークで食べる常識破りのジャンクかた焼きそば」
第5回:「創業90年の町中華で味わう極上“アンビエント”かた焼きそばの宇宙と無常観」
第6回:「まるでかた焼きそばのサラダ! 立川で100年以上続く福来軒の懐かしくて新しい逸品」
第7回:「エキゾチックなタイ版かた焼きそば“あんかけのスコール”で微笑みがあふれ出す!」
第8回:「“かた焼きそば名門校”出身の料理人による天衣無縫のあんかけと病みつき揚げ麺」
第9回:「羽生善治九段の勝利にも貢献した“将棋めし”聖地が『かた焼き祭り』を開催!」
第10回:「人生につまずいたときに優しく迎えてくれる中目黒の王道かた焼きそば」
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事