〈dj honda×ill-bosstino〉互いのプライドがぶつかり合う「混ぜるな危険」の行き着いた先
#ILL-BOSSTINO
レジェンドDJとするHIPHOPの答え合わせ
――今回のアルバムを聞いて思ったのは、世代の違う2人がやることでヒップホップシーンの過去・現在・未来が繋がっていくよいうなイメージがあったんですが、アルバムを作るにあたって全体像みたいなのは考えていましたか?
BOSS とりあえず曲をたくさん作って、10曲ぐらいできたときに1回並べて、足りない方向性の曲を肉付けして全体を整えていく作業、っていうのは今までと変わらなかった。リリック面では、THA BLUE HERBだったら日本のヒップホップシーンでの自分たちの位置付けや、日本のヒップホップの歴史に対しても、挑発を含めて目配せをして作るんだけど、hondaさんはそこはまったく構ってないから。良いビートと良いヴァースがあれば良い曲ができるっていうだけで。だから、ビートに対してヴァースで応酬することを延々と続けていく感じだった。
――THA BLUE HERBでやっていることもヒップホップなんだけど、今回のアルバムはもっと剥き出しというか……。
BOSS それは目の前にあるヴァースとだけ勝負して、他のことに構ってないからだと思う。hondaさんの真っ暗な密室のスタジオの中で、ビートと言葉だけで良い曲作る、本当にそれだけに集中する作業というかね。
――〈ビートと言葉〉というのは、今回のアルバム収録曲「KILLMATIC」のリリックにもありましたね。リリックで言うと「A.S.A.P.」の〈BOSS もうそれでいい無駄に手を加えるな これでいい〉というのも印象的でしたが、実際にレコーディングでhondaさんに言われたことですか?
BOSS そうそう。俺がいつも使っているスタジオのエンジニアだったら、一言でも納得いかなかったら100回でも録るし、3カ月にわたって1曲録るとかもあり得る。でも、hondaさんから「ここで決めろよ」みたいなヴァイブスを感じるときがあって(笑)。実際にhondaさんが口に出してるわけじゃなく、俺が勝手に感じているだけなんだけど、hondaさんと2人っきりだから、勝手にプレッシャーを感じちゃうんだよね。だから、今回のほとんどの曲は1回か2回、多くても録りは3回で終わり。どうしても納得がいかなくて直したいときでも、hondaさんに「もういいって」とか言われつつ。
――(笑)。
BOSS でも、基本的には3回で終わり。多少のズレがあっても「これでいい」って。まあ、ヒップホップっていうのはそういうもんだっていうか、それも頭ではわかってたんだけどね。hondaさんにそう言われて、また改めて思い出しというか。
――「A.S.A.P.」ではhondaさんの昔の話も出てきますね。
BOSS スタジオにいると、例えば「ウータン・クランに会ったことあるんですか?」とか「クイーンズでビートナッツとつるんでて、何をして遊んでたんですか?」とか、そういうのをやたら聞きまくっちゃって。
――ヘッズの頃の気持ちに戻って(笑)。
BOSS そう、超ヘッズに戻って、「ウエストコーストの誰が好きでした?」とか「ナズが出てきたときって、どういう感じでした?」とか、そういった疑問に全部答えてくれて。
俺は90年代初頭にヒップホップを好きになったけど、当時はネットもないし、札幌だしね。自分で想像するしかなかったヒップホップの答え合わせをさせてもらった感じだね。ある意味、それがレコーディングの時間の一番の楽しみでもあった。その中で当時のhondaさんの話も出てきて。これはhondaさんにも言ったんだけど、hondaさんが日本に帰ってきて、日本のラッパーとつるみ始めていろんな曲を作り出したときに、曲のクオリティは高いのにhondaさんの見せ方や伝え方が十分じゃないなと思っていたんだよね。俺だったらhondaさんがこれまでやってきたことをきちんと説明して、うまく伝えられると思っていたからこそ、「A.S.A.P.」のような曲は絶対に作りたかった。
――今やA.S.A.P.(編註:ASAP PRODUCTIONS=DJ YUTAKA、dj honda、DJ BEATらによるDJ/プロダクションチーム)という名前さえ知ってる人は少ないでしょうしね。ちなみに個人的にすごく好きな曲が「REAL DEAL」なんですが、THA BLUE HERBやソロ名義の『IN THE NAME OF HIPHOP』でもやっていなかったような、ゴリゴリのヒップホップで。
BOSS hondaさんならではのファンキーなヒップホップだよね。今までだったら絶対にやらないビートだし、すごく楽しかったし、やってよかった曲だね。
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