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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 『ディア・ライフ』「歌って踊らない」インド映画

Netflix『ディア・ライフ』は「歌って踊らない」──現代インド映画の見方が変わる!?

 インド映画といえば、「歌って踊るミュージカル」というイメージがないだろうか。これは90年代、『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995)が日本で話題になり、メディアがこぞって取り上げたことが要因のひとつだ。

Netflix『ディア・ライフ』は「歌って踊らない」──現代インド映画の見方が変わる!?の画像1
『ムトゥ 踊るマハラジャ』。 日本での公開は1998年。

 日本だけに限らず、他国でもインド=ミュージカルのイメージは強い。アカデミー賞を受賞したダニー・ボイルの『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)はイギリス映画だが、インド映画“らしく”するためにわざとラストにミュージカル・シーンを導入していたことも、間違ったイメージを拡散してしまった。

Netflix『ディア・ライフ』は「歌って踊らない」──現代インド映画の見方が変わる!?の画像2
『スラムドッグ$ミリオネア』

 歌、ダンス、サスペンス、アクション、コメディなどなど、さまざまな要素を詰め込んだものは、インド映画の中で「マサラ映画」と呼ばれている。インド人にとって映画を観ることは一種のお祭り的な感覚だったこともあって、お楽しみ要素を詰め込めるだけ詰め込もうとした結果、生まれたものだ。ベースにあるのは、ハリウッドの1920-50年代のミュージカル映画ともいわれている。

 だが、いったん冷静になって考えてみてもらいたい。例えば、日本には時代劇しかないだろうか、任侠映画しかないだろうか? 決してそんなことはなく、恋愛映画もアクション映画もホラー映画も……さまざまなジャンルがあるはずだ。

 この「マサラ映画」というのは、あくまで映画のジャンルのひとつだ。インド映画だって、歌も踊りもない作品の方が割合的には多いだろう。2000年代に入って急激にグローバル化が進み、さらに2010年代に入ると、インターネットやNetflixなどの動画配信の普及によって、映画が手軽に観られる環境になってきた。その一方で、自国の映画を世界に発信するために、より世界で受け入れられる作品にしなければならないという意識が強くなっていったのだ。

 なお「ボリウッド」というのも、主にヒンディー語映画を指したものだ。例えば日本でも話題になった『バーフバリ 伝説誕生』(2015)はテルグ語映画の「トリウッド」、『踊るマハラジャ』はタミル語映画の「コリウッド」とされている。

Netflix『ディア・ライフ』は「歌って踊らない」──現代インド映画の見方が変わる!?の画像3
『バーフバリ 伝説誕生』

 インドでは複数の言語が混在しており、都心部ではヒンディー語と英語をミックスした独特の言語が共通語になっている。「ボリウッド」映画でところどころに英語のセリフが入るのは、そういった理由からだ。

 繰り返すが、日本映画が時代劇ばかりではないように、フランス映画だってお洒落な映画ばかりではない。韓国ドラマもラブコメや時代劇だけではない。

 結局のところ、「〇〇らしい」「〇〇っぽい」というのは、そのジャンルを集中して輸入している国が作り出したイメージでしかないのだ。そこで偏りが生まれると、ステレオタイプな「〇〇らしい」という概念がいつまでも付きまとってしまう。

 年間1900本以上製作されているともいわれるインド映画だが、日本での公開は年に数十本。ほとんどがイベント上映で、一般劇場公開作は10本もない状況だ。これでは「インド映画らしい」イメージからの脱却はなかなか難しい。筆者はインド映画の向上を願って同国の作品を紹介し続けているが、その時はなるべくインド“らしく”ない作品を取り上げている。日本のインド映画ファンは、ステレオタイプを求めていることが多いからだ。それでは、なかなか先に進むことはできない。

 ということで今回は、インドならではの価値観や社会問題をテーマとして扱いながらも、「どうせ、歌って踊るんでしょ!」と思い込んでいる日本人が「インド映画らしくない」と唸ってしまうような映画を紹介しよう!!

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