『ハロウィンKILLS』のブギーマンは何を語りかけているのか? 時代を映し出す最新ホラー映画4作品を一挙レビュー
#映画 #ホラー映画
映画業界の世代交代による70~80年代オマージュ『マリグナント 狂暴な悪夢』
冒頭でも触れた通り、「ジャッロ映画」「スラッシャー映画」に挟まれて育ってきたのがいまの40~50代といえるだろう。
近年、ホラーだけに限らず80年代を扱った作品が多い理由は、映画業界の世代交代によって、40~50代のクリエイターが自分の意志を作品に反映させられる立場に上ってきたことが要因である。彼・彼女たちが、当時の体験や、実際に見てきたものを素材として映画に落とし込んでいるのだろう。
2021年11月12日から公開される『マリグナント 狂暴な悪夢』も、監督のジェームズが原点回帰とした作品。同作のコンセプトは、ビデオ店のホラーコーナーにあった70~80年代ホラーへのオマージュだ。
ネタバレがとにかくできない映画ということもあって、詳しくは説明できないが、ジャッロ映画からスラッシャー映画へと変化するグラデーションをメタ的に体現したような作品であるとだけは言っておこう。
『ザ・リング』(2002)『パルス』(2006)『ワン・ミス・コール』(2008)などのジャパニーズ・ホラーリメイクを経て、『エクソシスト』(1973)『オーメン』(1976)といった要素も加え、独自のスタイルを確立したことで、誰も観たことがなかったような心霊・超常現象系映画『インシディアス』(2010)や『死霊館』(2013)といったハイブリッド作品を生み出してきたジェームズの原点がそこにあるというのも妙に納得がいく。
ホラー映画が社会問題を描くことが多くなってきた背景としては、単純に現実社会の方が恐ろしいということもあるが、コンプライアンスの遵守やポリティカル・コレクトネスによって、表現の幅に制限ができ、奇形児や障がい者を連想させるような容姿を描きづらくなったという点も大きい。
その中でジェームズのような、良い意味でホラー映画におけるおバカな路線を突き進み、混じりっけない直球ホラーを描くことに長けている監督もいることで、全体的なバランスが保たれているように感じられる。
第34回東京国際映画祭で上映されたスペイン映画『ベネシアフレニア』も、ジャッロ映画へのリスペクトが強い作品ではあったが、下手に社会問題を取り入れたことで作品の内容を散らかしてしまっていたという印象がある。社会問題を取り入れなければならないという“強迫観念”がホラー映画業界に蔓延することもまた、問題視されることだろう。そんなホラー映画界において、ジェームズは貴重な存在と言える。逆に、ジェームズが社会問題を描きだしたら、世も末だ!!
製作/監督/原案:ジェームズ・ワン
出演:アナベル・ウォーリス、イングリット・ビス、マッケナ・グレイス
配給:ワーナー・ブラザース映画
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