『マリグナント 狂暴な悪夢』が「ホラー映画史上もっとも面白い」と断言できる理由
#ホラー映画
原点回帰しながらも新しいことに挑戦する
ホラー映画史上もっとも面白いと断言できる理由はそれだけではない。重要なのは、ジェームズ・ワン監督が、『ソウ』(2004)という低予算スリラーから、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015)や『アクアマン』(2018)のような大作アクション映画まで、絶賛された娯楽作を続々と手がけてきたことだ。
そのジェームズ・ワン監督が『死霊館 エンフィールド事件』(2016)以来5年ぶりにホラー映画でメガホンを取ったのが、この『マリグナント』。エンタメ性に特化した映画のノウハウを培ってきた名監督が、久しぶりにホラーに舞い戻り、しかもありとあらゆるジャンルの面白さ欲張りセットになっていたら、それはもう面白い映画になるに決まっている!というわけである。
さらに、ジェームズ・ワン監督は子どもの頃から大好きだった80年代から90年代のホラーサスペンス映画から大いにインスピレーションを得ているそうで、特にマリオ・バーヴァ、ダリオ・アンジェルト、ブライアン・デ・パルマ、デヴィッド・クローネンバーグなどの監督の作品を「自分らしい」形で描きたいとも願っていたそうだ。乱暴な言い方だが、『マリグナント』はジェームズ・ワン監督が好きなさまざまな映画を「ぶち込んだ」作品と言っていいだろう。
つまり、さまざまな映画(のジャンル)の元ネタがあるわけで、ジェームズ・ワン監督自身はそんな風に自分の好きな作品のスタイルに「原点回帰」しながらも、同時に昔ながらの特殊効果や特殊メイクを使うことができるオリジナルの物語を作り、「既存の作品にはないまったく新しいこと」にも挑戦したいという意気込みがあったのだそうだ。その新しいこととは具体的に何か?と問われれば、それがまたネタバレなので、とにかく観てくれ!としか言いようがない。
また、これまで「ありとあらゆるジャンルの面白さ欲張りセット」「監督が好きなさまざまな映画をぶち込んでる」とは書いたが、それらがただの雑多な寄せ集めや闇鍋状態にはなっていないこともミソ。何しろ脚本にはたくさんの伏線が忍ばされており、後半に向けて盛り上がるようなサービス満点の工夫があり、ジャンルを跨ぐような飛躍に衝撃を受けながらも「そうなることが納得できる」のだから。ただ「なんでもあり」になってしまったら、それこそどうでもいい、つまらない映画になってしまいかねないところを、「ものすごく考え抜かれ計算し尽くしている」からこそ、めちゃくちゃ面白い映画になっている!というのもジェームズ・ワン監督(脚本も兼任)のすごいところだ。
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