B’zとソウル/ファンク/AORの蜜月――『FRIENDS』シリーズと『The 7th Blues』から紐解く
#B'z #TOMC
現在ではあまり知られていないと思われるB’zのソウル/ファンク/AOR的側面に光を当てる本稿。前編では山下達郎『FOR YOU』(’82)などへの参加で知られる伝説のドラマー・青山純をキーパーソンとし、B’zを“グルーヴ”の観点~シティポップの文脈から楽しむ切り口をご紹介させて頂いた。
この後編では、25年ぶりの第3弾のリリース決定も大きな話題を呼んでいる『FRIENDS』シリーズ2作と、その間に位置する重要作『The 7th Blues』を中心に、具体的な楽曲を多数挙げながら、彼らの知られざる魅力を解き明かしていきたい。
『FRIENDS』に眠る、ダブルミリオンのプロトタイプ
そもそも、B’zはなぜソウル/ファンク/AOR的な音楽性を導入したのか。もちろん時流を踏まえた部分もあると思うが、活動初期のダンスポップからロックサウンドへの移行にあたり、うってつけだったことも大きいかもしれない。グルーヴが軸となっている点で前者と共鳴しつつ、同時に生演奏のアンサンブルや生音そのものの魅力も打ち出していけるからだ。
そして、そうしたテイストの楽曲に限らず、ロック寄りのイメージが強い「ZERO」(’92)や「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」(’93)にも(彼らが当時理想形としたであろうエアロスミスやレッド・ツェッペリンと同様に)確実にファンクをはじめとする“グルーヴ・ミュージック”の遺伝子は流れている。この遺伝子がロックサウンドへの橋渡しとして機能したからこそ、ソウル/ファンク/AOR的な要素を持ち合わせた楽曲の多くが、ハードロック路線がほぼ定着する『SURVIVE』(’97)までの時期に集中しているのではないだろうか。
1992年は、B’zが上記のシングル「ZERO」およびブルージーなナンバーを多数収録したアルバム『RUN』をリリースし、ロック方面に大きく舵を切った年とされる。『FRIENDS』シリーズの第一弾がリリースされたのはこの年の末だ。カップルの関係性の微妙な移ろいまで丁寧にすくい上げた歌詞と柔らかなデジタルリバーブの効いたサウンドが調和したAOR的な方向性は、一見『RUN』とは真逆のようでいて、紛れもなく同作収録の「月光」等から地続きのものである。
B’zの全楽曲中でも特に有名な、クリスマスソングの定番「いつかのメリークリスマス」を収録していることでも重要な『FRIENDS』だが、ここでは現時点で未だライブ未演奏の隠れた名曲「僕の罪」に光を当てたい。
松本の絶品のカッティングプレイを味わえる本曲は、1980年代のブラック・コンテンポラリーやブルー・アイド・ソウルに通じる都会的ブギーのアレンジが施されており、シンコペーションの効いたリズム構造も相まって、ダンスポップ期からのファンにも特に受け入れやすい楽曲だったのではないだろうか。小野塚晃による、オリエンタルな煌めきを纏ったキーボードも忘れがたい印象を添える(ちなみに小野塚晃はまもなく開催の〈B’z presents LIVE FRIENDS〉への演奏参加も発表されている)。そして、こうした特徴の多くは翌93年の「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」とも共通するものであり、ある意味で「僕の罪」はメガヒットシングルの序章的な楽曲と位置づけられるのも重要なポイントだ。
B’zと青山純と“スウィート・ソウル・ミュージック”
上記の諸作を経てリリースされた2枚組の大作『The 7th Blues』(’94)は、タイトルも相まってブルース・ロック方面の音楽性が中心であると思われがちだが、実際には後年の『FRIENDSⅡ』(’96)と並び、全ディスコグラフィー中でも特にソウル/ファンク/AOR寄りのサウンドが楽しめる作品でもある。
3曲で参加した東京スカパラダイスオーケストラをはじめ、多くの楽曲でブラスセクションがフィーチャーされているほか、厚いコーラス隊やオルガン、何より松本のワウギターのプレイが多くの楽曲を彩る、音の情報量を追いかけるだけでも聴くたびに発見のある名盤だ。また、本稿の前編でフィーチャーしたドラマー・青山純が、全曲で静・動や跳ねを自在にコントロールした圧倒的な演奏を残しているのもポイントだろう。
ここでは、「僕の罪」と同様に現時点でライブ未演奏の「THE BORDER」に光を当てたい。
流麗なストリングスが導くイントロは、アース・ウィンド&ファイアー「That’s the Way of the World」(’75)やレニー・クラヴィッツ「It Ain’t Over ‘Til It’s Over」(’91)などの系譜に連なるスウィートなソウル/R&Bの魅力に溢れている。カップルの“瀬戸際”を“国境”と解いた美しい歌詞も相まって、『FRIENDS』シリーズとの確かな連続性を感じさせる名曲だ。
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