ポスト新型コロナで“とんでもない観光ブーム”到来?地方都市は備えあるか
#地方創生 #小笠原伸 #新しいニッポンの地方創生
外出自粛が終わった後の観光はどうなる?
――トレンドはどう変わるんでしょうか。
小笠原 マイクロツーリズムがより一層盛り上がると考えています。飛行機や新幹線に乗って遠隔地へ向かうというのではなく、居住する地域の近隣を観光する旅行のことで、たとえば「車で1時間弱の近場の温泉に1泊2日で泊まりに行こう」「電車で数駅移動して隣町の街歩きをして楽しむ」というような形態ですね。あるいは今ブームになっているキャンプにしても、近場のキャンプ場に身軽に行く、なんてスタイルもそう。「観光白書」でもすでに、県内での宿泊旅行者が増加傾向にあると報告されています。
ーーそれこそ星野リゾートは昨年の時点でマイクロツーリズムを提案し、推奨していました。
小笠原 東京の大塚に新たなカジュアルホテルをつくり都市観光の取り組みを始めましたね(OMO5東京大塚)。東京観光であっても、もちろん今までのように新宿や銀座も旅程に入るにせよ、地図を持って下町を半日歩き回る街歩きツアーのようなものが続々と生まれてくるはずです。私は日本建築学会で東京の都市空間を歩いて見つめてゆくというワークショップを長く企画運営していたことがあって、「いつかこれが観光の一部になって、高級ホテルでお弁当つくってもらって街歩きをする時代が来るかもね」と運営する仲間とも話していたのですが、20年以上たってそれが現実化したんだなぁと感慨深いです。
ですが、大半の既存の事業者や自治体はこうした変化をキャッチアップできていないと感じます。早く気づかないと、既存のプレーヤーは退場を余儀なくされてしまうかもしれない。今、地方の古い商店街の建物をリノベーションして新しい宿泊施設にしたり飲食店を作ろうという若い人の動きは盛んです。でもその流れ自体を認識できないとすれば否応なくそこと比較されてしまう未来が着々と近づいている。
――たしかにこの1年の間にも、地方都市におしゃれなホテルをオープンしたという若手事業者のツイートをよく見かけました。
小笠原 スペイン風邪などの歴史を見ると、パンデミックというのは拡大後にある程度の期間で収束するもののようで、その点ではこのコロナ禍での逆風がやんだ後に何が起こるかは想像できなかったわけではありません。星野リゾートのように「絶対に需要が戻ってくる」とふんでいた事業者もいたわけですから。
――外出自粛期間が無限に続くわけじゃない、と。
小笠原 もちろん、観光事業者の方にとって突然、需要が1割に落ち込む事態は本当に災難としか言いようがなく、その苦悩は慮らないといけません。でもそれはそれとして、次を考えていた人とそうでない人の差が出る場面であることも確かなんです。
マイクロツーリズムであっても「旅行代理店に頼んで、何をやったら良いか考えてもらおう」と考える地方はいまだに存在します。観光事業を手がけようというのに地元のことがわからないというのはあまりに痛々しいですが、自分たちが地域での生活や人生で何を楽しみに、何を魅力に生きているのか理解できてないという地域に果たして外部から客が来るのかどうかは難しいところでしょう。
そしてこれまで観光地として繁栄してきた地域であっても、このポスト・コロナで状況が激変する中で、今後もこれまで通りの戦略で観光事業を持続できるのかどうか考えておく必要があったと思っています。未知のライバルが増えたり近隣に新しく魅力を押し出す観光地が出てくれば相対的に自分の地域は低迷してしまいますよね。するとこれまでのやり方はもうおしまいにして、自分たちで考えて観光資源を整備して地元にお金が落ちる仕組みを自分たちでつくらなければいけない。外の力を借りると地域の外にカネが流出することも覚悟しなければなりません。
その点では、楽ではないけれど、本当の地方創生としての観光がやっとスタートラインに立てるチャンスがまさに今、やってきているんだと思います。ぜひとも全国の各地域が観光に真剣に取り組み、皆さんが自ら枠組みを考えて準備してゆく、そんな姿が見られることを期待したいですね。
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