ポスト新型コロナで“とんでもない観光ブーム”到来?地方都市は備えあるか
#地方創生 #小笠原伸 #新しいニッポンの地方創生
いま日本の各地で「地方創生」が注目を浴びている。だが、まだ大きな成功例はあまり耳にしない。「まちおこし」の枠を超えて地域経済を根本から立て直すような事例は、どうしたら生まれるのだろうか?
本企画では、栃木県小山市にある白鴎大学で、都市戦略論やソーシャルデザイン、地域振興を中心とした研究を行う小笠原伸氏と、各地方が抱える問題の根幹には何があるのかを考えていく。
第5回目は、新型コロナ収束後の地方都市や観光業について、どのような変化が起こりうるのかを聞いた。
◇ ◇ ◇
――少し前になりますが6月に、観光庁から「令和3年版観光白書」が発表されました。2020年の訪日外国人旅行者数は前年比87.1%減、日本人国内旅行消費額は前年比54.5%減と、落ち込み方はやはりすさまじいものがありました。
そこで地方創生においては、やはり観光は重要な柱のひとつ。今回は観光という観点から、コロナ禍が地方創生に与える影響を読み解いていきたいと思います。
小笠原 わかってはいたことですが、「観光白書」を読むとその落ち込み方にあらためて愕然とします。これは事業者が個別に努力してどうにかなったものではありません。ただ、これから先は違います。おそらくこの後、とんでもない観光ブームが来ると私は予想しています。
――ワクチン接種が進んだ影響からか新規感染者が激減し、緊急事態宣言やその後の大都市での“様子見期間”もいったん解除となり、いよいよ経済活性化にむけた営業再開が動き出していますよね。
小笠原 まず前提として、私は都市学者であって疫学の研究者ではないので、新型コロナウイルスの挙動やワクチンの効果などの詳細ははっきり言ってわかりません。ただ政府発表や報道に触れている限りでは、1年半以上続いた状況の出口がおぼろげながらも見えてきた、と理解しています。
実は今年の春から、自分が関わっている自治体さんには「これから観光が一気に盛り上がりますよ」とお伝えしているんです。コロナ禍が収まったときに人が何を考えるか。最初に思い立つのは「しばらく会えていない人に会いに行こう」でしょう。久しぶりに実家に帰省する、少し遠方の友達に会う、ご無沙汰していた親戚に挨拶する……。「行かないと」と思う場所がひとつふたつ思い浮かぶ人は少なくないと思います。
――たしかに、1年以上親に会っていないという話をよく聞きます。
小笠原 さらに、ずっと家に籠もっていた反動から「収まってきたなら国内で旅行しようか」「山歩きを再開しよう」「海外にも行きたいね」という動きも当然出てきます。生活の延長で人間関係を整えるための動きと、楽しみとして旅行に行く動きが同時に秋以降にやってくる。
――観光市場に揺り戻しが来る、と。
小笠原 垂直に落ち込んだグラフが、感染状況の推移次第ですが、今度はまた垂直に持ち上がるタイミングが来ることでしょう。さすがにまだしばらく海外旅行は難しいですし、訪日客の復活ももう少し先になるでしょうが、国内の観光需要は最初は限られた領域ではありますが、徐々に、そしてあるところから急に跳ね上がることになると思います。昨日まで閑古鳥が鳴いていた場所に、突然以前のような賑わいが戻ってくるわけです。でも自治体さんも観光関係者も、いまいちそれを理解できていないのではないかという危機感があります。
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