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日刊サイゾー トップ  > 『家つい』亡き夫との3カ月だけの結婚生活

『家、ついて行ってイイですか?』20年前に送った亡き夫との3カ月だけの結婚生活「あれだけ好きになれる人はもういません」

最愛の夫の夢を引き継いで、彼女は「幸せです」と言った

 深夜の西荻窪で番組が声をかけたのは、仕事帰りの1人の女性。彼女の名前はたかこさんで、月に数回開く居酒屋に立った帰りらしい。スタッフが「家、ついて行ってイイですか?」と尋ねると、彼女の返事はOKだった。

 到着したたかこさんの家が、またとんでもない豪邸なのだ。なんと、間取りは6LLDDKK! 家は3代前から西荻窪だったが、彼女の両親はすでに他界。現在はたかこさん1人が二世帯住宅に住むという状況だそうだ。しかも、長年飼っていたヨークシャテリアの愛犬は昨年に亡くなった。独り身でペットがいなくなるのは、きっとつらいはずだ。

――こんな広い家に1人で住んでて寂しくないですか?
「そうですねえ。でも、今は幸せかなって思う」

 たかこさんが生活しているのは、この豪邸の1階。2階は両親が生活していたらしい。せっかくだから、スタッフは2階も見せてもらうことにした。でも、階段は使わない。というか、使えない。母親が脳梗塞で車椅子になったとき、階段を壊して家にエレベーターを設置したというのだ。まるで、貴族のような家である。

 そんなこんなで2階は見せてもらったが、さすがは6LLDDKK。1階にまだ見せてもらってない部屋が残っていた。というわけで1階へ戻り、スタッフはたかこさんに質問をした。ここは何の部屋ですか?

「あれ、主人が亡くなったって言いましたっけ? 亡くなってもう20年くらい経つんですけど」

 たかこさんは約20年前、ご主人にも先立たれていた。享年36。たかこさんの3歳年下の夫で、写真を見ると男前だ。2人は美男美女の夫婦だった。たかこさんと亡夫との交際歴は6年。「結婚しようか」と2人が話し合っていたその年に夫の体調は悪くなり、肝臓がんが発覚した。そのときはすでにステージ4で、余命はあと3カ月だった。

「入院したときはまだ籍を入れてなくて、詳細な治療方法は教えてもらえない。奥さんになればお医者様から1番に相談されるので入籍しました」

 そして、入籍してから3カ月後に夫は他界した。

「洋服のセンスも、笑いのツボも、味覚もそうだし、すべてすごく考えが似てて、心地いいっていうか。だから、あれだけ好きになれる人はもういませんね。駄目だってわかっていても、ずっと一緒にいたいだけだったの。ここで結婚しなかったら、絶対自分が後悔するかなって」

 部屋にある額縁を見ると、夫からの手紙が綺麗に飾ってあった。泊まり込みで看病してくれた妻への感謝が記された手紙だ。その文章の横にはひまわりの絵が描いてあった。亡夫が入院したのは6月、ひまわりの季節である。

「ひまわりの花言葉が……あの……『いつも一緒だよ』っていうことを知って。それで毎日ひまわりを買ってきて、枯れちゃうとまた買ったりとかしてたんですね。そこから、私はひまわりが大好きになったんですけど。だから、今でも……2人のお花かなと思って(泣)」

 夫が亡くなってからずっと、たかこさんは独身だ。今まで、他の男性からのアプローチもあったはずである。でも、20年経った今も彼以上の人はいない。結婚してたった3カ月で死別した夫。だから、余計に愛は深くなった。たかこさんの時間はそこで止まっている。

「寂しさとか悲しさを本当に感じ始めたのって、半年過ぎてくらいですかね。いろんなやることが落ち着いて。世間は普通に今まで通りに生活してるのに、『なんで私だけ違うんだろう?』みたいなのはありました」

 夫の病気が発覚する前、2人は「おいしい食べものを出せる店をやろうよ」と話し合っていた。彼の夢を実現するため、たかこさんは飲食店を開店したのだ。

「(夫が)おいしいものを出すお店をやりたがっていたことを実現できたので、私は幸せだと思います。もしかしたら守ってくれてるのかなと思って生きています」

 まだ、彼女は吹っ切れていない。でも、たかこさんははっきり「幸せです」と口にした。彼女は夫の夢を継いだのだ。

 この番組には、時に深い悲しみを持った人が登場する。つらいから、誰かに聞いてもらいたいから、「家、ついて行ってイイですか?」の問いにOKを出す人たちだ。1人では抱えきれない悲しみがある。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2021/11/03 20:00
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