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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 人生につまずいたときに優しく迎えてくれるかた焼きそば 

人生につまずいたときに優しく迎えてくれる中目黒の王道かた焼きそば 

40年以上も地元住民に愛されてきた理由

 懐かしさや美味しさはもちろんのこと、亡き祖父が薦めてくれたかた焼きそばという料理の存在をおざなりにして長い間、ほかの料理にうつつを抜かしていた罪悪感、と同時に「この道を極めなければ」という使命感。

 小学生になる頃には祖父と離れて暮らすようになり、最後は葬式にも行けなかった愚息ならぬ愚孫の私。せめて、かた焼きそばを食べることが献花の代わりになればいいのだが……。

 思い出話はここまでにして、幸楽のかた焼きそばについて説明しなければいけない。

人生につまずいたときに優しく迎えてくれる中目黒の王道かた焼きそば の画像5
シンプルだけど、こだわりが凝縮されている。

 具材は白菜、青菜、キクラゲ、ニンジン、エビ、イカ。そして、ちょこんと乗ったうずら卵のオマケ演出が嬉しい。

 揚げ麺は中太でいて、ちょうど良いキツネ色。ご主人秘伝のタレが加わった甘さの感じるあんかけに、隠し味はネギ油&ごま油のWオイル。

 凡庸なビジュアルに見えるが、そこには一線を画すこだわりが凝縮されている。

 突飛なアイデアでインパクトを残すだけなら意外と簡単なもの。王道こそシンプルかつごまかしの利かない、険しくも美しい道なのだ。40年以上も地元住民に愛されてきた理由が、この一品に詰まっている。

 あの日、道楽のフライ麺を、幸楽のかた焼きそばを食べたおかげで、今がある。

 もし、この記事を読んでいるあなたが人生につまずいて目的を見失っている最中なら、幸楽に行ってみるといいかもしれない。気風の良い女将さんと共に、美味しいかた焼きそばが優しく迎えてくれるだろう。 自宅に戻り、初めて買ったCDを聴いてみる。僕が僕らしくあるために。

 

<INFO>
・幸楽
住所:東京都目黒区上目黒2-44-3
営業時間:11:00~15:00(L.O.14:00)、17:00~20:00(L.O.19:00)

定休日:木曜

<連載「かた焼きそばのフィロソフィー」の過去回>
第1回:「海老天ベンツも潜む圧倒的な情報量の“揚げ日本そば”スタイル」
第2回:「中野坂上にも“夢と魔法の王国”があった! 豚レバーとピリ辛餡が刺激的な『ミッキー』のかた焼きそば」
第3回:「椎茸・ザ ・ボンバーの一点突破! “映え”だけじゃない極端かた焼きそばの滋味と享楽」
第4回:「インド、アメリカ、中国が同盟を結んだ! フォークで食べる常識破りのジャンクかた焼きそば」
第5回:「創業90年の町中華で味わう極上“アンビエント”かた焼きそばの宇宙と無常観」
第6回:「まるでかた焼きそばのサラダ! 立川で100年以上続く福来軒の懐かしくて新しい逸品」
第7回:「エキゾチックなタイ版かた焼きそば“あんかけのスコール”で微笑みがあふれ出す!」
第8回:「“かた焼きそば名門校”出身の料理人による天衣無縫のあんかけと病みつき揚げ麺」

MARUOSA(ミュージシャン)

1980年、大阪生まれ、東京在住。エクストリーム・ミュージシャンとして、これまでに20カ国以上でライブを行い、世界3大メディア・アート・フェスのひとつ「ソナー」(スペイン)、約28万人も訪れる欧州最大級の「ロスキレ・フェススティバル」(デンマーク)、世界最大の音楽見本市「SXSW」(アメリカ)などに出演。かた焼きそば研究家としてテレビ・ラジオ出演やコラム執筆といった活動も行う。

Twitter:@maruosa

Instagram:@maruosa

【maruosa.com】

まるおさ

最終更新:2021/10/30 11:00
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