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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 元芸人が考える「痛みを伴う笑い」とは

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティ」とは何か? 元芸人が真剣に考えた

ドリフが見せた真骨頂

 子供たちが毎週土曜日、食い入るように見ていた『8時だョ!全員集合』(TBS)。その中で繰り広げられる笑いのほとんどが”痛みを伴う笑い”だった。

 学校コントでは『高木ブー』『仲本工事』『加藤茶』『志村けん』というボケの猛者たちに対し、たったひとりで立ち向かうツッコミ『いかりや長介』はメガホンを持って四人を鎮圧し、家族コントでは竹ぼうきで尻を叩き、剣術コントでは竹刀で殴るのだ。まさに”痛み”の歴史である。

 さらに痛みのプロ集団ドリフターズの大ボケ「志村けん」と「加藤茶」は痛みを研究し、ある答えまで辿り着いた。その答えとは何か。いかりや長介がメガホンで頭を叩く、すると叩かれた志村けんと加藤茶は叩かれた頭部とは全く関係のない前歯を抑えて痛がるのだ。頭を押さえるより何倍も痛そうに見えて、何倍も面白い。誰にも真似できず、誰にも越えられない、まさに”痛みを伴う笑い”の真骨頂だ。

 ふたりの痛がる姿を見ても子供たちはもちろん大人すら不快にならず笑う。それは本当に痛いとは思っていないからだ。笑わせる為にやっているというのを本能的に嗅ぎ分ける力が昔の人たちにはあったのだ。どうして無くなってしまったのか。それはあれもこれも危険だ、子供に悪影響だ、不愉快だ!とお笑いの枠を狭めて、お笑いの多様性を減らしてしまった結果なのでは無いだろうか。多種多様なお笑いがあったからこそ面白かったし、いじめを助長せず、悪影響にはならなかった。

 実際にいじめられていた僕は、お笑いがあったから夢を持って前に進めた。

 同様に、壮絶ないじめにあっていたがネタをやって一目置かれるようになったやつ。暴走族を辞めて何もすることが無い日々から救われたやつ。死に場所を探していたがある芸人のドラマを見てお笑いを目指したやつ。

 お笑いに救われた人間は沢山いる。そうやって芸人を志し、成功した奴らが次は誰かの人生を救うことになるかもしれない。

 9月28日の定例委員会からこの「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議が始まっている。”痛みを伴う笑い”の本質を理解した上での審議であって欲しいと願う。以前のコラムでも触れたが、僕はいつの時代もテレビは家族の輪の中心であると思っている。だからこれ以上、テレビの可能性を奪い、笑いのダイバーシティの幅を狭めるような結論にならないことを祈るばかりだ。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2021/10/31 08:00
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