『関ジャム』松田聖子を支えた編曲家・大村雅朗という存在。松田、大村、松本隆による天才同士のトライアングル
#松田聖子 #関ジャム
10月17日放送『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)は、松田聖子の特集。昨年9月にも彼女の特集は行われているが、そのときはVTR出演だった。しかし、今回はついに本人がスタジオに来た! 松田聖子はもはや歴史上の人物(美空ひばりのような)的扱いを受けている感さえあるが、このプレミア感はどうだろうか。筆者も昔は中森明菜のほうに惹かれていたが、年を経るごとに松田聖子のすごさを俄然再認識した。そんな人はきっと多いのではないか?
実物の松田聖子は、容姿も声も話し方も可愛らしい。どう見ても、今もアイドル。とても、5カ月後に還暦を迎える人とは思えない。59歳、現役アイドルである。ただ、一つだけ。スタジオ内で彼女に対してだけ度を超えた“女優ライト”が当てられていたのは、何度見てもいただけない。当てすぎてて、マイケル・ジャクソンくらい白かったのだ。あれは不自然である。
マドンナを目指した90年代。そしてアイドルに留まる
松田聖子ほど名曲揃いのアイドルはめずらしい。あの時代に生き、筒美京平からの提供作がないにもかかわらずだ。彼女自身が“特に好きな曲”として挙げたのは、Holland Rose作曲「ハートのイヤリング」と、呉田軽穂作曲「瞳はダイアモンド」の2曲だった。当時はシンガー・ソングライターが変名でアイドルに曲を提供する風潮があり、前者は佐野元春(ホール&オーツから取ってホーランド・ローズを名乗った)の、後者は松任谷由実による楽曲である。そこに、作詞家の松本隆が加わる布陣。松田聖子というスーパーアイドルと、そこに集まった才能が、ただただ凄すぎる。
そんな彼女が放った唯一のミリオンヒットは実は90年代にリリースした楽曲、「あなたに逢いたくて ~Missing You」である。当時、松田聖子は全盛期を過ぎていた。さまざまなスキャンダル(暴露本騒動など)でワイドショーの標的となり、30代半ばに差し掛かっていた彼女は、そのタイミングでこの曲をヒットさせた。本当にすごい。音楽プロデューサーの本間昭光は、「あなたに逢いたくて」が収録されたアルバム『Vanity Fair』の中の一曲「Darling You’re The Best」を称賛する。「C’est La Vie」を86年にヒットさせたミュージシャン、ロビー・ネヴィルとコラボして完成した楽曲だ。
「ロビー・ネヴィルと組んだときに『すごいところにアンテナ張ってんだな』と思って。一音楽ファンとしてすごく尊敬する。それでちゃんと96年の最先端行ってますからね」(本間)
「Darling~」はシングルではないものの、MVが制作された。それを見れば明らかだが、彼女はこの頃、間違いなくマドンナを意識していた。アメリカに進出し、映画『アルマゲドン』に一瞬だけカメオ出演していた時代。今振り返ると、迷走していたと思う。偽マドンナ的ディーバの方向へ行かず、アイドルに留まった現在の松田聖子を見ると感慨深い作品だ。
「青い珊瑚礁」セルフカバーでは越えられないオリジナルの輝き
松田聖子が“普段一番聴いている2作品”として挙げたのは、昨年と今年10月にリリースしたセルフカバーアルバムだった。言ってしまえば、今回のスタジオ出演はこの2枚の宣伝である。
さて。セルフカバーが功を奏したケースを、筆者はあまり知らない。オリジナルには絶対に敵わないのだ。歌い手は成長するし、キャリアを重ねれば人は変わる。あのとき好きだった声と歌い方が別物になってしまうのだ。松田聖子の歌い方は、特に10年以上前から大きく変わった。キーに関してではない。溜めて粘っこく歌うようになった。ライブを見ると、オリジナルとは明らかにタイム感が違う。
セルフカバーではアレンジも変えたという。「青い珊瑚礁」のカバーでは、彼女自身の発案で「タカタカタカタカタン」というストリングスをイントロに挿入。そして今回、番組では「青い珊瑚礁」のオリジナルver.とカバーver.の聴き比べを行った。いや、もう圧倒的にオリジナルがいい。40年近く慣れ親しんできた名曲である。あのときの輝きは越えられない。美しい記憶に付け足しをして、良くなることはない。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事