危険な三角関係を描く青春映画『ひらいて』で気づく山田杏奈の「目力」が、その演技の「総決算」になった理由
#山田杏奈 #綿矢りさ
原作の大ファンの監督による冷静な視点
この『ひらいて』の監督・脚本・編集を務めた首藤凜は1995年生まれと若く、「初めて読んだ17歳の冬から、この映画を撮るために生きてきました」と宣言するほどの原作小説の大ファンだ。首藤監督は学生時代から同作の脚本をライフワークのごとく書き続け、綿矢りさへ直接手紙を書いてアプローチしたこともあったという。プロデューサーの杉田浩光は、当時の彼女を「この作品が撮れないなら人生が終わる」ほどの熱量を感じてたのだそうだ。
そんな首藤監督は、映画化にあたって「多くの人は主人公に感情移入ができない」ことに気付き、さらに原作は主人公の地の文(主観)で物語が進んでいくことから、映画では「引いて見る感じ」にしよう、第三者が主人公を見た時に「気になるちょっと面白い女の子」と見えるように描こうと、苦労をしたのだという。その上で、映画を観た人が「イタいな」と思いつつも共感してくれたり、それとは逆に「なんか見たくない!」と目を覆いたい気持ちになってくれたりするといいな、というねらいで脚本を作り上げたのだそうだ。
つまり、首藤監督は原作への溢れんばかりの愛情を持ちながらも、冷静な批評をする視点から、万人が楽しめるように主人公のキャラクターを「調整」していたのだ。その目論見は、前述した山田杏奈の名演もあいまって、その心情を言葉で説明しなくても「イタいし自分勝手だし間違っている」と同時に「共感もできるし見捨てられない」という魅力を持つ主人公に、しっかり昇華されていた。
なお、そんな首藤監督が原作に感銘を受けたのは、「好きな人に好かれるという恋愛の形からはみ出した世界観、思ってもみない方向から人が人に受け入れられる物語」であったという。この通りの魅力は、映画の『ひらいて』にももちろんある。痛々しい、生々しいなどと前述もしたが、その先にあるのは、そうしたネガティブな言葉だけでは説明できない、好き合うだけの楽しい恋愛では推し量れない、物語や価値観の豊かさだった。単純には言語化できないその面白さを、ぜひ劇場で堪能してほしい。
映画『ひらいて』
10月22日(金) 全国ロードショー
出演:山田杏奈、作間龍斗(HiHi Jets/ジャニーズ Jr.) 、芋生悠、山本浩司、河井青葉、木下あかり、板谷由夏、田中美佐子、萩原聖人
監督・脚本・編集:首藤凜
原作:綿矢りさ『ひらいて』(新潮文庫刊)
音楽:岩代太郎
主題歌:大森靖子「ひらいて」(avex trax)
プロデューサー:杉田浩光 中村優子 富田朋子
制作プロダクション:テレビマンユニオン
製作:「ひらいて」製作委員会
配給:ショウゲート
C) 綿矢りさ・新潮社/「ひらいて」製作委員会
公式サイト:hiraite-movie.com
公式 twitter:@hiraite_movie
公式 Instagram:@hiraite_movie
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