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『ねほりんぱほりん』壮絶すぎる女子刑務所の生活、元受刑者が笑いながら告白「ガラス玉みたいな目をしてる」

「もう戻りたくない」という言葉に見る日本の刑務所の限界

 マリアさんは服役中に出産をした。覚醒剤をやっているときにガサ入れされ、そのときに初めて妊娠がわかった彼女。出産は3人の刑務官に見張られ、手錠と腰縄をつけたままの状態で行われたそうだ。

 そして、無事に子どもを出産。しかし、生まれた子どもはすぐに乳児院へ送られてしまった。その子は乳児院で病気が発覚し、マリアさんの姉夫婦が引き取って育てることに。その数年後、マリアさんは刑期を終えて出所した。

マリア 「(刑務所を)出たら『ママー!』『待ってたー!』っていうのを思い描いてたんです。でも、私の姉のことをママと思って育っちゃってるから、『何、このおばさん?』みたいな(笑)。『ママだよー!』って言ってもギャン泣きだし、すごい毛嫌いされて、すごくつらくて。姉に戻したままになってますね。今も“叔母さん”です」
YOU  「つらいねえ」

 いや、可哀想なのは子どもである。マリアさんとの母子関係を内緒にしないと、子どもが可哀想すぎる。

「姉の家に遊びに行ったとき、『綺麗で可愛いのを買ってあげたい』『ランドセルは私が買ってあげたい』という思いがあったんですけど、姉は『なんでこの子にだけ(プレゼントを)買うの!? ウチの子もいるんだからバレるじゃん!』って。めちゃくちゃ姉とケンカして」(マリアさん)

 乳児院から引き取ってもらう際、マリアさんは「情が生まれるから、あなたが母親だってことを内緒にしてくれるなら預かるよ」と姉夫婦から言われたそうだ。「手錠をかけられながら産んだ結果がこれ……?」が彼女の抱える苦しみならば、姉夫婦にも苦しみはあったはず。親族から犯罪者が出て、白い目で見られた。なのに、その子どもを引き取った姉夫婦もえらい。そして現実問題、姉夫婦に育ててもらうのが子どもにとって最も良いシナリオに思えてしまうのだ。今、その子の籍はマリアさん側にあるらしい。子どもが大人になれば、多かれ少なかれ真実に気付く。母だと思っていた女性が叔母さんで、本当の母は前科持ちだと知ったとき、この子は絶望してしまわないか? どう考えても、可哀想なのは子どものほうなのだ。

 他の2人も、出所後はつらかった。レイコさんはスーパーのレジ打ちの職に就くも、店長に呼び出され「前科あるよね? ウチはそういうのいらないから」と解雇を告げられてしまった。前科持ちに厳しいのが日本の社会だ。これを、まさに社会的制裁と呼ぶのかもしれない。最終的にレイコさんは前科・前歴を隠せず生きていける風俗の職に就き、現在はプレイヤーを引退。嬢としてではないが風俗に携わる仕事をしているという。

 マトイさんは出所後、パートナーと共にまたしても薬物に手を染め、親から生活費をむしり取るように。しまいには祖父の遺産にまで手を出し、生活保護を受けていたという。結果的にそのパートナーとは別れたが、後にその男性は逮捕された。現在、マトイさんは水商売に従事している。

 闇が深い。更生させるために刑務所に入ったはずが、出所後には更生できない社会構造が待っていたのだ。これは無限ループである。

 今回の『ねほぱほ』を見た感想は、3人に共感がまったくできなかったという事実。正直言って、普通の人とは住む世界の違う人たちに見えた。

「刑務所は自由と時間を奪われるところなので、もう戻りたくないです」(マリアさん)

 つまり、刑務所の生活がひどいからもう入りたくないと思っているだけで、犯した罪に対しての反省ではないのだ。更正教育の成果ではない。ここに、日本の刑務所の限界を感じてしまう。獄中手術や獄中出産における人権無視の扱いはむごかったが、「それを含んでの刑罰」という考え方が刑務所側にはある気がする。ちなみに、“世界一豪華な刑務所”と呼ばれるハルデン刑務所を擁するノルウェーの再犯率は約20%と言われ、40%以上とされる日本の再犯率よりかなり低い。今回のテーマとは逆に、いつか日本の刑務官の話も聞いてみたいと思った。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2021/10/21 20:00
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