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空気階段もぐら「このままじゃ借金がなくなる」 コント師が売れる“らせん構造”と元祖クズの帝王・蛭子能収の今

空気階段もぐら「このままじゃ借金がなくなる」 コント師が売れるらせん構造と元祖クズキャラの帝王・蛭子能収の画像1
蛭子さん

空気階段・鈴木もぐら「なくなっちゃいますよ、このままじゃ借金が」

 大きく盛り上がり「伝説の回」とも呼ばれた今年の『キングオブコント』(TBS系)は、空気階段の優勝で幕を閉じた。優勝した彼らはこれまでにもバラエティ番組にそれなりに出演していて、優勝前に深夜の冠番組(『空気階段の空気観察』、テレビ朝日系)のスタートが決まっていたりもするわけだけれど、おそらく今後、その姿を見る機会はさらに増えるのだろう。

 一方で、鈴木もぐらは芸人のなかでも、借金やギャンブルなどの“クズ”な生活がフィーチャーされてきた。大会で優勝し、今後テレビに引っ張りだこになってしまうと、そのキャラはどうなってしまうのか――? そんな質問を、空気階段が出演した10日の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、東野幸治が当人に投げかけていた。この問いに、もぐらは次のように答えた。

「どうしたらいいんですかね? なくなっちゃいますよ、このままじゃ借金が」

 振り返ってみれば、空気階段のもぐらだけでなく、今回の『キングオブコント』で準優勝したザ・マミィの酒井貴士も、ギャンブル好きや借金など、いわゆる“クズ芸人”としてバラエティ出演を重ねてきた。で、同大会での1本目のネタに出てきたのは、空気階段はSMクラブに通う消防士と警察官。ザ・マミィは街頭で大声を出しているおじさん。世間的には“クリーン”とは決して言い難いネタだ。

 そして、いずれのコントもよくウケていたわけだけれど、“クズ”キャラの浸透がそのウケを後押ししていた気もする。特にザ・マミィのおじさんのネタは「この人はテレビで”クズ”をやってる人」という情報があるのとないのとで、印象が違うのではないか。

 これまでしばしば、「コント師は二度売れないといけない」と言われてきた。コントを演じる芸人はコント内のキャラクターをまとっているけれど、バラエティ番組で求められるのはその人の”素”に近いものだったりする。漫才師の場合は漫才上のキャラクターが“素”に見えるのでそのままテレビに出られたりするけれど、コント師の場合はなかなかそう上手くいかない。コント師は一度、コントのキャラクターで売れた後に、もう一度テレビのキャラクターで売れないといけない――。バナナマンの設楽統など、コントを主体としてきた芸人はしばしばそんな趣旨のことを語ってきた。

 他方で、今年の『キングオブコント』を見ると、少し違った状況もあるのかもしれないとも思う。もちろん、空気階段にしろザ・マミィにしろ、以前からコントの面白さに定評のあるコンビだ。最初はコントが注目されてテレビに出演するようになった、という順番があることは間違いない。

 ただ、若手のお笑い芸人が活躍する機会がテレビで増えてきたためだろうか。バラエティで“素”のようなキャラクターが知られることで、コントがウケる素地が広がっている、みたいなこともあったように感じた。トップバッターの蛙亭も、ホムンクルスを演じた中野周平がバラエティにそれなりに出ていたからこそ、緑色の液体を吐いても観客が引かずに笑っていた面があるように思う。もちろん、世間的にほぼ知られていない男性ブランコが準優勝していたり、空気階段もザ・マミィも、2本目のネタは“クズ”要素が小さかったりなど、ひとつの流れだけですべてを語れるわけではないのだけれど。

 さて、キングになった空気階段。もぐらの借金はどうなるのか。あるいは、『ワイドナショー』では水川かたまりが「金八先生は偽善だ」と母親に教わってきたという話をしていて、「今度、武田鉄矢と共演を」みたいに周りにけしかけられていたけれど、その話は今後どうなるのだろうか。テレビでキャラクターが知られ、コントのウケにブーストがかかり、さらにテレビで売れる。コント師はらせん状に売れていく。

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