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『家、ついて行ってイイですか?』愛した人は生き別れの双子だった。彼氏と兄弟を同時に亡くした女性の自宅は

『家、ついて行ってイイですか?』愛した人は生き別れの双子だった。彼氏と兄弟を同時に亡くした女性の自宅はの画像1
『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)

 10月6日放送『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)は、「2021年秋 波乱万丈人生SP」と題した3時間半の拡大版だった。いや、3時間半って! 今回のSPで、「Let It Be」は果たして何回流れたのか?

遺影を指定して逝った愛妻、作り笑顔で受け止めた夫

 言ってしまうと、今回は新作VTR以外に再放送分がかなりの尺を埋める3時間半SPだった。

 まずは2016年、つまり5年前の取材VTRから。ドラマ版『家、ついて行ってイイですか?』で、我が家の坪倉由幸が演じたエピソードだ。

 深夜の茨城県・荒川沖駅でスタッフが声をかけたのは、ベロンベロンに酔っ払った一人のおじさんだった。番組スタッフが「家、ついて行ってイイですか?」と尋ねると、彼は「オッケーです! 来いよ、おら~(笑)」と返答。陽気だ。

 釣り具店を営んでいる彼の年齢は49歳。「大事にしているものは?」という問いに、「家族」と即答したこの人の家へ行くのが楽しみだ。

「妻がね、あんまり体の調子が良くないんだよなあ。でもね、そういうことを含めて家族が1番です」

 到着した家が、またいい一軒家なのだ。アメリカンテイスト漂う、お洒落な平屋。夫婦二人が生きていき、老後も仲良く住める住宅である。だが、家に上がると誰もいない。奥さんは入院中のようだ。

 部屋の中には、彼が奥さんと撮った写真が飾ってあった。彼女の名前はのり未さん。見るからに可愛い人である。釣り具店オーナーの彼は、奥さんを必死に“釣り上げた”のだろう。

「(自分の)一目惚れです。いろいろアタックしましたよ。最初に釣りに行った日、ちょっと洒落た食事をおごってあげたいなと思ったんだけども、その前に『私、お弁当作ってきた』と。それは……効きますよ(笑)」

 部屋の中を見ると、たくさんのマンガが積み上がっている。実は、のり未さんは漫画家だそう。彼女の仕事部屋には資料が大量にあったし、彼女が手掛けた作品もたくさん保管されていた。

 実は、夫でありながら彼がこの部屋に入ったのは初めてだそう。相手の仕事に口出しすると夫婦はケンカになる。お互いを尊重するため、相手の仕事から距離を置いていたのだ。

「(仕事部屋は)こんなになってんだね。こんな風に資料がなってんだ(笑)」

 いつも笑顔を絶やさず会話するこの男性。あまりにずっと笑っているのが少し気になる。どうしても、作り笑顔に見えるのだ。

――奥さんはいつから病気なんですか?
「え~っと、3年前。スキルス胃がん。一番難しい病気」

 そんな事実さえ、彼は笑いながら口にした。1枚の額縁を見ると、のり未さんの写真が時系列順に並べてあった。ご両親が結婚し、自分が生まれ、そして結婚してからの足跡を、彼女は自分でまとめていたのだ。

「(妻の病状は)厳しいですね(笑)。厳しいです。去年からずっと入退院を繰り返してます。残念ながら余命はもう出てると思います。自分には言ってこないですけど、おそらく半年以内でしょう」

 のり未さんの仕事部屋には、2人がデートで行った霞ヶ浦の写真が飾ってあった。

「これはたぶん、妻が『私が亡くなったときはこの写真を見て思い出してくれ』って言ってるやつかな? その一つだな(笑)」

 押し入れには文房具がまとめて置いてあった。ファイルの束にはふせんが貼ってあり、「空ファイルです。再利用するか捨ててください」と書いてある。もう家に戻れないのだとのり未さんが覚悟し、夫へ残したメモだろうか。

 デスクの上には、自分の人生を一冊にまとめたのり未さんの写真アルバムが置いてあった。夫でさえ初見のアルバムだ。そして、その横にはのり未さんの写真5枚を貼った一枚の紙が残されていた。

「アハハハ……、すごいね(笑)。遺影候補で、この中から使ってくれって。決めてるみたいだね。初めて知った。びっくりした……難しいね。つらいね(笑)。でも、生きていた証を残してくれたんだな……残してくれてるんだな」

“作り笑顔”の理由がわかった。彼は、笑っていないと壊れてしまう。自宅取材をどうしてあんなに歓迎したのか。一人では抱えきれなかったのだろう。

 のり未さんは身辺整理を済ませていた。いろいろと準備してあるのは、彼女からの精一杯の夫への愛情。家を見れば二人が支え合っているのはよくわかった。

 彼が妻の終活の跡を見たのは、果たしてこのときで良かったのか。それとも、のり未さんが亡くなった後に見るのが良かったのか。相思相愛の夫婦。奥さんへの想いをこんな風に笑顔で話されると、より悲しみが伝わってくる。

 この取材の5カ月後にのり未さんは旅立った。彼女は、「はまのり未」の名前で活動していた漫画家である。ネットで検索すると、のり未さんが残したブログは今でも見ることができる。

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