マヂラブのネタ一般的には微妙な評価も一歩違えば決勝進出もあった?
#キングオブコント #吉松ゴリラ
ニューヨークのネタが秘めていた超高度なテクニック
そいつどいつ「パックしてる彼女」
同居している男女のやりとりを中心に、「日常生活でホラーに見える部分」に着目したコント。
ネタ中に盛り込むボケを、言葉ではなく動きやギミックによる「視覚的な笑い」で構成している。競合を排して一本のネタとして見た場合、起承転結の精度が抜群。「視覚的な笑い」をより強調すべく、前半は“静”から入り、後半の“動”へ活かす振り幅が秀逸。
ボケは「不条理なボケ」ではなく「日常風景を切り取るボケ」を中心に据えている。このようなネタは「日常」を表現できるだけの演技力が必要。演劇の世界に「“普通”を演じる事が一番難しい」というセリフがあるとおり、「過剰なコントキャラは演じられるが、日常系は演じられない」という芸人も多い。
その演技はカップルの日常風景を壊さないよう過剰にツブ立てる事がなく、今大会で1番自然。言葉でまったく説明していないにも関わらず、たわいのないやり取りだけで男女が過ごした期間まで感じさせる。
今大会はツカミが大ボケから入るコントが多かった為、前半部分が地味目に見えてしまったのが非常に残念。ネタ単体で見れば、狭いテーマをこれだけ大きく広げられる台本力と、それを支える演技力ともに光っているネタ。
ニューヨーク「ウェディングプランナー」
結婚の打ち合わせに来た新郎と、ウェデングプランナーのやりとりを描いたコント。
大喜利テイストのボケと並行し、「ボケのキャラクター」と「会話劇のおもしろさ」を中心に据え構成されたネタ。コントキャラを作る際の、「人間のどの部分を切り取るか」の目線が秀逸。
ボケとなるキャラクターは、蛙亭やジェラードンなどのコントチックな大ボケキャラと違い、日常生活で出会う絶妙にズレているキャラクター。「完全な奇人ではなく、少しズレているキャラ」を題材にした場合、その切り口をどう表現するかは完全にセンスとなる。
キャラのズレを引き立てるオーソドックスな設定から入り、アップテンポな会話でボケ数も圧倒的に多い。2~3個外してもそのほかのボケでコントに引き込めるように作られた、練りに練られたネタ構成。
漫才・コント共にズバ抜けた実力を持つニューヨークだからこそできた、非常に高密度なネタ。
ザ・マミィ「変なおじさん」
道を尋ねる青年と、道で叫んでる変なおじさんとのコント。
「登場人物同士の関係性」がねじれた設定を作り出し、そのキャラクターへの偏見を自分自身に言わせるネタ。このネタの成否を分けるのは、キャラの説得力とねじれ設定に入る導入のスムーズさ。ちなみに双方共に完璧だった。
偏見を言うキャラ自身に説得力があるかどうかは、このネタのキモ中のキモ。1言ごとのウケ方が全く変わる。最後おじさんが改心する人間ドラマのストーリーも、前・中盤におじさんキャラへ共感を集められたからこそ、盛り上がる。ボケ酒井の、仕上がりが秀逸だった。
また今回のように、関係性のねじれ設定を作るネタは、導入部分で時間尺が必要になる場合が多い。辻褄合わせのように無理矢理ねじれを作ると違和感が残ってウケが弱くなるため、丁寧な説明が必要になるからだ。
そしてこのねじれ設定をどれだけ自然でかつ短時間で見せるかは、賞レースにおいて超重要項目。なぜなら賞レースには、制限時間があるから。極端な話、前半の説明の部分を削れなければ、後半の爆ウケするミュージカル部分を入れられない。
決まった尺の中で前半に時間を使うという事はそういう事で、「前半部分のウケが弱くなる」ではなく、「一番盛り上げにかかる後ろの時間を削る」という行為。
このネタでは、そのねじれ設定の作り方が非常に短時間でかつスムーズだった。その上、ツカミにしているという、一番の理想型。変なおじさんがツッコんだ瞬間に裏切りのツカミとして目を引いた感があるが、実際はねじれ設定へのインも可能とした、二枚の刃。
見事なキャラクターセレクトと、そのキャラクターを活かし切る台本が両立されているネタ。
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