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おぼん・こぼんの“許し”をめぐる物語と、最後の最後の急展開

おぼん・こぼんの許しをめぐる物語と、最後の最後の急展開の画像1
おぼん・こぼん(一般社団法人漫才協会HPより)

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(10月3~9日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

「おぼん・こぼん仲直りプロジェクト」

 子どものころ、アニメの予告にワクワクしていた。もちろんアニメ本編も面白いのだけれど、場合によってはそれ以上に、次回の放送内容のヒントが詰まった映像に興味を掻き立てられていた気がする。

 大人になったいま、そんな子ども時代のワクワクに一番近いのは、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の予告だと思う。「ハリセン春菜のじゃねーよカルタ」「逆に林家ペーの誕生日を知ってる芸能人、悲しいかないない説」「クロちゃん寝て起きてお花畑にいたら死んだと思う説」など、言い回しの妙もあり、いつも期待感が高まっている。

 で、「おぼん・こぼん仲直りプロジェクト」が予告されたときも、ワクワクが止まらなかった。今年で結成56年、2年前まであまり詳しく知らなかったベテラン芸人のコンビ仲に、こんなに興味を惹かれるのも考えてみれば不思議な話だが。そして、不仲を楽しむというのも悪趣味ではあるのだが。

 最初に『水曜日のダウンタウン』がおぼん・こぼんの不仲を取り上げたのは、2019年2月のことだった。「芸人解散ドッキリ 師匠クラスの方が切ない説」と題した説の検証で、おぼん(当時70歳)がこぼん(同じく70歳)に解散を持ちかける、というドッキリが仕掛けられた。しかし、最初から喧嘩腰のおぼんに、こぼんもヒートアップ。こぼんのほうから「すっきりしましょう」と解散を持ちかける流れになってしまった。

 ドッキリとして始められながらも、最終的に行き着いたのは、仕掛けた側も仕掛けられた側もどこにもいない、ドッキリではない何か。その後、番組では催眠術を使った仲直り企画などが放送されるも、2人の間は冷めきったまま。いや、さらに不仲が深まった様子にさえ見えた。おぼん・こぼんはこれまでも繰り返し不仲の時期を経験してきたが、現在が最悪の状態らしい。いまにつながる不仲は、約10年前から続いているという。

 そんな経緯があった上での、2週にわたって放送された「おぼん・こぼん仲直りプロジェクト」である。その1週目、9月29日の放送では「おぼん・こぼんヒストリー」と題し、2人の出会いや若手時代の活躍などを収めた映像を、おぼんとこぼんが別々に鑑賞する様子が放送された。NHK総合の『ファミリーヒストリー』を模したその映像によると、もともと高校の同級生だった2人は、こぼんがおぼんを誘う形でコンビを結成。大阪から上京し、師匠につかず舞台で芸の腕を磨いた。一緒に家族旅行をするなど、以前は芸人のコンビとして珍しいぐらいの仲の良さだったらしい。

 ただ、映像を見ながら過去を思い出し感傷的になるおぼんに対し、こぼんの硬い表情は揺るがない。そんな2人の心がもっとも動かされたように見えたのは、それぞれの娘(若いころは芸人として2人でコンビを組んでいたらしい)が映像に出てきたときのこと。おぼんとこぼんの娘は、どちらも父親の相方を「2人目のお父さん」だと思っていると語った。父親たちの舞台上の姿に憧れ一度はコンビを組んだ2人は、おぼん・こぼんの舞台衣装がバラバラなことが特に不満らしい。

 そんな映像を見終わると、こぼんは「意地張ってると思うの、お互いに」と“本音”のようなものを口にする。“仲直り”の予感。しかし、「もう辞めてもいいかなっていう方向に走ってるから。自分ではね」(こぼん)、「なんでもっと素直になれんのかなと思ってさ。それが腹立つのよ」(おぼん)と、2人からはそれぞれ不穏な言葉が飛び出す。冷めきった仲は、なかなか縮まることはなかった。

 この日の放送は、こぼんの娘が2人を結婚式に招待したところで終了。続きは次週に持ち越しとなった。私たちが見るのは“許し”か、それとも”決別”か。人が人を許している場面は、ネットはもちろんテレビでもほとんど見ることがない。次週予告を見ながら、“許し”を目にしたいという気持ちになった。

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