『護られなかった者たちへ』佐藤健と阿部寛の目力対決! 東日本大震災から10年、人と人の繋がりを問う
#映画 #佐藤健 #阿部寛
ひとりひとりの役割、視点が濃厚な人間ドラマを構築していく
今作は単に社会派な作品というわけではない。軸として描かれるのは、ヒューマン・サスペンスである。
繰り返される猟奇殺人の謎解き要素も加わることで、日本が抱える社会問題がエンターテイメント作品として消費されてしまう心配もあるかもしれないが、そこは安心してもらいたい。
『空飛ぶタイヤ』(2018)でも原作者・池井戸潤の描いた、労働者と組織の距離感の中にドラマ性をより強く反映させることで、人間ドラマとしても、社会問題としても見事なバランスに仕上げてみせた脚本家・林民夫。林は今作においても、原作者・中山七里の主張したい生活保護の現実に、強いドラマ性を加えることで、絶妙なバランスの物語を構築している。
ドラマに説得力を持たせるのが役者の役割であり、ここで活きてくるのが佐藤と阿部の目力。二人の目に映る光景は、同じでありながら、感じるものはまったく違う。しかし、何度かリンクしそうにもなる。このすれ違いこそが、同じ出来事を経験した人間の感情の違いを対照的に描いているようでもある。
それと同時に、脇を固める俳優陣も大きな役割を果たしている。例えば笘篠の相棒刑事・蓮田(林遺都)の視点は、震災の直接的な経験者ではない人物のそれだ。外側から、仙台の人々を俯瞰的に見ている。映画を観ている側としては一番近しい存在であることから、蓮田の立場から観てみることで、また違った発見ができるかもしれない。
その他にも、『花束みたいな恋をした』『まともじゃないのは君も一緒』など2021年公開の作品だけで5作に出演する清原果耶といった若手に加え、吉岡秀隆や緒形直人といったベテラン陣までもが、一人ひとりなくてはならない存在であり、良くも悪くも「人と人との繋がり」を実感させる役割を果たしている。
新型コロナによって、他者との繋がりが薄れがちになりつつある現代だからこそ、観るべき作品だ。
『護られなかった者たちへ』
– キャスト –
佐藤健 阿部寛
清原果耶 林遣都 永山瑛太 緒形直人
岩松了 波岡一喜 奥貫薫 井之脇海 宇野祥平 黒田大輔 西田尚美 千原せいじ 原日出子 鶴見辰吾 三宅裕司
吉岡秀隆 倍賞美津子
– スタッフ –
監督:瀬々敬久『64-ロクヨン-前編/後編』
脚本:林民夫『永遠の0』・瀬々敬久
音楽:村松崇継『思い出のマーニー』
原作:中山七里「護られなかった者たちへ」(NHK出版)
主題歌:桑田佳祐「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」(タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント)
2021年10月1日(金)全国公開
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