『護られなかった者たちへ』佐藤健と阿部寛の目力対決! 東日本大震災から10年、人と人の繋がりを問う
#映画 #佐藤健 #阿部寛
阿部寛の顔の濃さ、威圧的な目力の強さについては、『テルマエ・ロマエ』(2012)やドラマ『結婚できない男』(2006)などでネタ的に使用されていることからもおわかりだと思うが、目力俳優で忘れてはならないのが佐藤健である。
佐藤の目力は、『るろうに剣心』シリーズでは優しさと悲しさ、そして闘志といった心情を表し、『ひとよ』(2019)では、殺人を犯した母への恨みと同時に愛しさも表現してみせるなど、比較的口数の少ないキャラクターに深みをもたせるように機能しており、漫画原作の映画に多く出演しているのも、演技が漫画的になり過ぎず、リアリティを追求できるからだろう。
阿部と佐藤は、『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』(2010)で初共演を果たしている。しかし、あくまで主演とサブという立ち位置だった。しかしついに2021年10月1日、W主演によるまったく異なった目力対決が勃発した映画『護られなかった者たちへ』が公開される。
□ストーリー
東日本大震災から10年を経た仙台で、全身を縛られたまま放置され「餓死」させられるという、猟奇的な連続殺人事件が起きた。被害者の2人は人格者として知られ、他人から怨まれるような人物ではなかった。担当刑事の笘篠(阿部寛)は、2人の共通点からある一人の男に行き当たる。その容疑者は、別の事件で服役し、刑期を終え出所したばかりの利根(佐藤健)という男だった……。
「人と人との繋がり」とは何かを問う、社会派群像劇
偶然にも8月に公開されたアニメ映画『岬のマヨイガ』が似たテーマを扱っていた。東日本大震災などの大きな災害や事故を経験した者たちが結束し、復興を目指す中で、悲しみや不安は同じ者同士、身寄りのない者同士が「疑似家族」のようなコミュニティを形成していく。
ホロコーストを生き延びた者たちの、その後を描いたハンガリー映画『この世界に残されて』(2020)も同じであるように、それはいつの時代でも、どこの国でも共通していると言ってもいいだろう。
大まかなテーマとしては似ているのだが、今作は『岬のマヨイガ』『この世界に残されて』よりも長い期間を経た者たちの物語が描かれる。
時の流れとは残酷なもの。あるいは、人間の未熟な点といえるのかもしれないが、復興によって普通の生活に戻っていく中で、極限の状況下で築かれた結束や絆は失われていってしまう。
今作では「生活保護」「復興支援」の矛盾点に言及している。国民の最低限の生活を保障する制度でありながら、一方で不正受給者が後を絶たない問題点があるのも事実だ。
同じ境遇であるはずの人々の中でも、生活を取り戻すタイミングは人それぞれ。それが復興格差となって表れてしまうのは、役所に勤める人間も同じであり、同じ経験をした者同士が、人間の価値を選別する側と、される側の立場に別れてしまうのも皮肉なものだ。
役所側の視点から、国と人を仲介する立場の難しさを痛感することで、政治家や国の政策の曖昧さや矛盾点が浮き彫りにされ、私たちが生きるこの世界に、見えない境界線が張り巡らされている現実を叩きつけられる。
しかし、それを社会問題として放置するのではなく、今作なりの回答を提示してみせたのだ。
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