ももクロあーりん主催『AYAKARNIVAL』武道館開催 カミングフレーバーは”令和の田村潔司”になれるのか?
#佐々木彩夏
カミングフレーバーに流れる「Sの遺伝子」
武道館と聞いて誰もが思い出すのは、00年2月26日の田村潔司VSヘンゾ・グレイシーの歴史的試合だろう。リングスKOKトーナメントの準々決勝として行われたこの試合は、日本のプロレス・格闘技史上最も重要な一戦である。遡るこ97年、高田延彦が「400戦無敗」という生きる伝説ヒクソン・グレイシーに破れた。翌98年のリベンジマッチでも、高田は負けた。
高田=UWFこそが最強だと信じていたファンたちは、自分たちが捧げてきた青春が幻想だったと突きつけられ地に膝をついた。
グレイシー一族の勢いは止まらず、ヘンゾも99年に坂田亘を秒殺した。そんな中、田村潔司というUWF最後の遺伝子を継ぐ男がグレイシーに挑むことになったのだ。ファンは期待した。そして恐れた。今度こそ本当に、夢は終わってしまうのではないかと。
そして訪れた当日、田村潔司は普段とは違い、UWFのテーマ曲に乗って入場した。会場は爆発した。これは田村潔司個人の戦いではない。Uの魂を背負った戦いなんだとファンは瞬時に悟ったのだ。Uのテーマで入場するタイミングはここしかなかった。91年1月にUWFが解散してからおよそ10年、それだけの時間が必要だった。まるで試合が始まる前からもう終わったような空気の中、田村は勝った。
カミングフレーバーはSKE48ではなく、カミングフレーバーだ。
だが、カミングフレーバーには「Sの遺伝子」が流れていることもまた事実である。即席ユニットであった彼女たちには、いつだって明日はなかった。
でもあのパシフィコ横浜から2年、カミングフレーバーはたくましく生き残った。そろそろ自分たちを誇ってもいいころだ。
21年11月17日、『AYAKARNIVAL 2021』。あの頃「最強」と呼ばれたSKE48を、とうとう超える時がやってきたのかもしれない。カミングフレーバーはきっと、自分たちのオリジナルOVERTUREを流して入場するだろう。むしろそうであるべきだ。
だが、その音色の内側で、SKE48に憧れた7人、SKE48を信じたファンの胸の中ではきっとそれぞれの「Sのテーマ」が流れるだろう。いや、もうすでに流れている。
彼女たちのリーダーは野村実代。赤い衣装の頑固者。その懐には今、見えない小太刀が抱かれているはずだ。
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