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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 東出昌大の「信じたくても信じきれない」ハマり役

映画『草の響き』東出昌大が「信じたくても信じきれない」役にハマる理由

奈緒というその人が持つ魅力

映画『草の響き』東出昌大が「信じたくても信じきれない」役にハマる理由の画像5
© 2021 HAKODATE CINEMA IRIS

 主人公の妻は原作には登場しない映画のオリジナルキャラクターであり、彼女を演じた奈緒も強烈な印象を残す。主人公の分身と呼べる佐藤泰志が、実際に自律神経失調症と診断されており、その時期には結婚をしていたことから、妻を映画で登場させることにしたのだそうだ。

 奈緒は2021年に、準主役と言っていい大きな役をこなした映画が、『彼女来来』『君は永遠にそいつらより若い』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『マイ・ダディ』と、続々と公開されてきた。

 それらで「表向きは天真爛漫で愛らしいが、裏では複雑な心境でいる」といった役を繊細かつ大胆に演じてきた奈緒が、今回の『草の響き』では心を病んだ夫に対して親身に接しているようで、不安や不満を噴出してしまうギリギリで保っているような、東出昌大の役と同等と思えるほどに危うい役を好演していた。

映画『草の響き』東出昌大が「信じたくても信じきれない」役にハマる理由の画像6
© 2021 HAKODATE CINEMA IRIS

 特に印象に残るのは、奈緒が夫が好きになった瞬間を思い出して「ちょろいかな?」と言うシーンだろう。夫婦関係が決定的な破綻をせずにいたのは、この妻の愛らしさと、本当に夫が好きだという気持ちなのだと、奈緒というその人が持つ魅力も合まって、心から思えるのだ。大東駿介演じる昔の友人との掛け合いもあり、「この関係が続いてほしい」と思えることも、大きな魅力となっていた。

 そして、前述してきた通り、東出昌大が演じるのは、不安定で危うく、信じたくても信じきれない、そんな役柄だ。現実でのスキャンダルがあったからこそ、その役柄に説得力が増したというのは意地の悪い分析かもしれないが、やはり本人の俳優としての成熟もあってこそのハマり役になったとも思える。静かなドラマであるが、激動とも言える感情の変化がある、そんな映画の面白さを、東出昌大をはじめとした俳優たちの熱演から感じ取ってほしい。

 

『草の響き』
10月8日(金)より新宿武蔵野館・ヒューマントラストシネマ有楽町/渋谷ほか全国順次公開!
原作:佐藤泰志『草の響き』(『きみの鳥はうたえる』所収 / 河出書房新社刊)
企画・製作・プロデュース:菅原和博
監督:斎藤久志 脚本:加瀬仁美
出演:東出昌大、奈緒、大東駿介、Kaya、林裕太、三根有葵、利重剛、クノ真季子、室井滋

ヒナタカ(映画ライター)

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

ひなたか

最終更新:2021/10/14 10:50
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